コラム
2012年07月27日

記録を残すということ-失った愛犬の写真とシンクタンクのホームページ

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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やや大げさな言い方だが、先日取り返しのつかない失敗をしてしまった。我が家では、今年の4月に産まれて間もない子犬を飼い始めた。あまりに可愛いので写真を撮りまくっていたのだが、これを印刷しようとしてデジタルカメラからパソコンにデータを移そうとした時に、誤って消去してしまったのだ。失敗の原因は、パソコンが買い換えたばかりのもので操作方法に慣れていなかったことにある。どうやら、デジタルカメラのメモリーカードのデータを全て消去するボタンを間違って押してしまったようなのだ。
   子犬の成長は早い。飼い始めた当初、わずか850グラムだった体重は早くも3キログラムを超えた。もちろん、我が家の愛犬チーズは今でも可愛い。しかし、これは人間が自分の子どもはどんなに大きくなっても可愛いと思うのと同じで、姿かたちが一番可愛いのは人間と同様にやはり赤ちゃんの時だろう。
   このような失敗は、写真は写真屋で現像をしてアルバムなどで保管することが一般的だった時代にはありえなかった。もちろん、紙媒体の写真は時間の経過とともに変色してしまうという問題があったし、火災などで消失したり、引越しの際に紛失したりするリスクもあった。しかし、少なくともクリックひとつで大量の写真が一気になくなることはなかった。便利になった分、失うものも大きいというところだろうか。一番可愛かった頃の愛犬チーズは記録から消えてしまった。あの姿は記憶の中に残しておくしかない。

写真に限らず情報の保存方法は私が社会人になった20年程前と大きく様変わりした。私は業務上、他社のホームページ上に掲載されている経済レポートを読むことが多い。かつては重要と思われるレポートは全て紙媒体で保存していたが、今はファイルをパソコンにダウンロードすることにより電子媒体で保存することがほとんどだ。
   また、発行されるレポートの量が飛躍的に増加する一方、パソコンの容量には限度があるため、後から読み返す可能性があるレポートでも自分のパソコンに保存しないことも多くなった。読みたくなった時にその会社のホームページにまたアクセスすればいいと思うからだ。自分でファイルを保存するかわりに、レポートの発行元がホームページ上に保存してくれていると考えることもできるだろう。
   しかし、このようなやり方をしていると時々思わぬ落とし穴にはまることがある。ホームページのリニューアルなどによって、読みたいレポートが削除されてしまっていることが時々起こるためである。最近、各シンクタンクが経済見通しをどのように改定してきたかを時系列で調べようとしたことがあった。しかし、過去の経済見通しのレポートはホームページ上から削除されている会社が多く、最新の経済見通しだけしか掲載されていないところもあった。

もちろん、レポートが発行された時に自分で保存をしておけば問題はないわけだが、ここでは情報の発信側の問題にも触れておきたい。私自身は一度ホームページ上に掲載したレポートは特別の事情がない限り、残しておくことが望ましいと考える。たとえば、後になってその主張が間違っていたことが分かったとしても、その当時はそれが正しいと考えていたのであれば、記録として残すべきである。特に、私が担当している経済予測は間違うことがいわば宿命ともいえる。予測が間違ったからといってそれを記録から消してしまったら進歩がない。いったんホームページ上に公開したレポートは、責任をもって保存しておくことがシンクタンクとしての誠実な態度ではないだろうか。
   私自身は美的センスが全くないので、当研究所のホームページのデザイン等が優れているかどうかを判断することができない。ただ、ホームページを開設した1990年代後半以降に発行したレポートは原則としてそのまま保存されており、誰でもアクセスして読むことができるようになっている。この点はひそかに誇りに思っているところである。
   したがって、その気になれば当研究所の経済予測がどれだけ外れているのかを10年以上のデータを使って検証することができる。興味と暇のある方はやってみることをお勧めします。

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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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