コラム
2012年07月19日

高齢者とタブレット端末-高齢者に最適の情報通信端末では?

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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数ヶ月前に見た、電車内のある光景が非常に印象に残っている。
   混み合った朝の通勤電車の端の席に、恐らくお二人とも70歳代後半ではないかと思われる小柄な老夫婦が座っていた。暫くして、男性が膝の上に置いたバッグから、平たい渋い柄の布袋を取り出した。何だろうと見ていると、紐を緩めて袋から取り出されたモノは、黒光りするタブレット端末であった。軽やかなダブルタップなどの操作の後、時々フリックしながら電子ブックで読書を始められた。その途中で、隣席の女性が画面を覗き込んで指差し、男性と言葉を交わしては頷いていた。電車の終点が近づくと、タブレット端末の布袋は速やかにバッグに収められた。古い和服の再利用と思われる古風な布袋と最先端のタブレット端末のコントラストが見事で、とても印象に残っている。
   さらに2週間程前の昼間の電車内では、素足にモカシンを履いたお洒落な白髪のシニア(60歳代後半?)が、欠けたリンゴマークの付いたタブレット端末をものすごい勢いでフリックしているシーンを見かけた。

筆者は高齢者雇用や高齢期の働き方を調査研究テーマの一つとしているため、上記のシーンを見て、昨年のドコモのテレビCMを思い出した。高齢者によるビジネスとして全国的に良く知られた株式会社いろどりの葉っぱ(つまもの)ビジネスの1シーンで、徳島県の上勝町のおばあちゃんがタブレット端末を使っているというものである。上勝町の状況は知っていたつもりであったが、このタブレット端末の活用シーンには思わず膝を叩いてしまった。
   このCMを見るまでは、筆者は、過去の記憶に基づき、上勝町の生産者(高齢者)宅には大き目のトラックボールと小ぶりの専用入力キーボードが接続されたパソコン端末があり、専用ソフトで受発注が行われていると思い込んでいた。自宅のパソコン端末では、葉っぱ採取に山へ出かけている間は、発注情報には対応できない。その点、モバイルのタブレット端末であれば、ビジネスチャンスを逃すことも少なくなるだろう。このCMのタブレット端末を扱うおばあちゃんの笑顔がより一層輝いて見えて、とても印象的であった。

タブレット端末に表示されるアイコンを指先でダブルタップしたり、表示された画面をスクロール、ピンチアウト・インする操作は恐らく年齢にほぼ関係なく、多くの人に情報通信端末による様々なコンテンツの利用を容易にしよう。そう考えてみると、操作が容易で画面サイズの大きいタブレット端末はまさに高齢者にうってつけの端末ではないだろうか。
   既に携帯電話やパソコンではシニア層向け機種の先行事例があるし、間もなくシニア向けのスマートフォンも登場するようである。そこで、シニア向けに開発された様々なアプリケーションを搭載し、地域コミュニティ情報のポータルサイトやソーシャルメディアへのアクセスや利用を容易にする等の工夫を凝らした、シニア向けの専用タブレット端末を提供できないものであろうか。
   また通信費の点でも様々な工夫で定番の格安料金メニューを選択可能にすることによって、高齢者層のICT活用を促進できないだろうか。そうすれば、地域福祉や高齢者自身のQOL向上に大きく寄与できる可能性が高まるであろう。
   とはいえ、高齢者像は多様でもあり、シニアやシルバーと銘打った商品・サービスを忌避する人も少なくない。そのような人には通常のタブレット端末を高度活用してもらえばよい。考えれば考えるほど、高齢者のタブレット端末活用の可能性は高いように思われてならない。

冒頭に登場する高齢者のタブレット端末の活用シーンは、近い将来、ごく普通の日常の一コマになるのではないだろうか。



(過去の参考レポート)
  1.基礎研REPORT(冊子版)「高齢社会を包み込む情報化」(2003年10月)
  2.基礎研所報「中高齢者のIT活用」(2003年12月、ニッセイ基礎研究所ライフコース・パネル調査)

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年07月19日「研究員の眼」)

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