コラム
2012年06月28日

介護ロボットは普及するか-ロボットは超高齢社会へのソリューションの幅を広げるか-

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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かつては、「介護」と「ロボット」という言葉を並べた場合、そのマッチングにはどこか違和感が感じられた時代があったかもしれない。確かに「介護」という言葉には人が提供するやさしい、穏やかなといった印象があるのに対して、他方、「ロボット」は言葉の響きからしてゴツゴツした機械の先入観が生じやすい。

ところが、近年では市民の生活の場面や眼にする光景に度々ロボットが登場し、ロボットそのものに対する印象も変わってきているようだ。形状からして従来のロボットのイメージであるヒューマノイド(人)型のロボットとは全く異なった形状のロボットが登場している。例えば、お掃除用の円盤型ロボットが好調に普及している。想定する機能を発揮させるには居室の構造がバリアフリーであることや幾つかの前提条件があるようだが、昼間は家族不在となる家庭や単身世帯などで人気のようである。また、原発事故で活躍したビデオカメラを搭載しクローラー(キャタピラ)の付いた遠隔操作の小型の車両型のロボットも知られるようになった。これらの姿は、ロボットという言葉の印象からは程遠く、旧来よりの固定的なイメージに拘泥する必要のない時代が来ているようだ。

筆者は、先般、介護や福祉の現場で実際に用いられつつあるロボットについてレポート(基礎研レポート 2012-02月号)した。そこではでは3機種ほどを紹介しているが、人の心を癒すアザラシ型のロボットや下肢の外側に装着して足の歩行機能等を支援し機能回復を目指すロボット、さらに両腕の不自由な人の食事を支援するアーム型のロボットなど、その姿や機能は多彩である。海外で高い評価が与えられたり、折に触れ、マスコミ報道などがなされることから市民の認知も高まりつつある。しかし、その普及の歩みは遅々としたものだ。
   福祉や介護領域での活用を前提としたこれら日本を代表的するロボットでも、開発されてから既に10年ほどが経過している。この間、日本の高齢化率は待った無しに上昇を続けている。福祉や介護のためのロボットは、産業用ロボットのように工場での活躍やモノを相手にするのではなく、生きた人を対象に様々な機能を発揮することが求められる位置づけである。万が一にも利用者に事故があってはならないので、その準備期間と見れば普及速度の緩慢さも納得できなくはない。

とはいえ、これら福祉や介護等の領域での活躍が期待されているにしては、その機器の熟成と普及のスピードの緩慢さに少し心配な点もある。ロボットの導入というと、省力化や効率化といった要素への期待感が高くなる。もちろんその潜在力を持つ機器も多数あるが、それだけではなく、それらを利用する人にとって様々な効用(QOLの向上)をもたらす点を忘れてはならないだろう。利用者には様々な状態の人がおり、全ての人に当てはまることは難しいとしても、利用者の大きな癒しとなったり、立ち上がり歩行が不可能な人が機器の支援によりそれらが可能となることでリハビリテーションの意欲が高まったりと、様々な利用者への効用が期待される。

今後さらに高齢化が進行する超高齢社会において、課題の改善や解決のための新たな方法や手段を開発、実用化して有力な選択肢を数多く創り出していくことは、高齢化社会への対応の仕方としても大事なことではないだろうか。多忙な介護や福祉の施設等々で活用しやすく役に立つ新たなロボットというツールを、経済や制度的な側面からも後押しできないか。ロボットは幅広いテクノロジーを結集したものであり、日本におけるイノベーション創出の場としては大いに期待できる側面も持つ。
   このような形でイノベーション創出がライフサイエンスやクリーンエネルギーの開発など様々な領域に伝播することで、日本の超高齢社会を活性化させることに繋がっていくのではないだろうか。また、その素材や要素、実現のための潜在力は日本に十分に集積されているのではないだろうか。後はそれらを上手く組み合わせたり、円滑に物事が動く仕組みづくりであったりと、人の要素がカギとなりそうだ。それら日本の潜在力を開放する強力な政策を期待したい。

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年06月28日「研究員の眼」)

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