コラム
2012年06月27日

少子化対策は政策より俗説?-総人口5,000万人を超えた韓国の経験から

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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韓国の主要メディアは6月23日に、韓国の人口が5000万人を超えたことを一斉に報道した。1960年に2500万人であった韓国の人口はその後継続的に増加し、1984年には4000万人を超え、それから29年が経った2012年には5000万人を超えることになった。今後も韓国の人口は増加し続け、2030年に5,216万人(中位推計)でピークを迎える。しかしながら少子高齢化の急速な進行によりそれ以降は人口減少社会に突入することが予想されている。すでに人口減少社会を経験している日本の立場から考えると、人口減少はそれほど驚くことではないが、問題はそのスピードの速さにある。つまり2010 年の韓国の高齢化率は 11.3%で日本の 23.1%に比べればまだ低い方であるが、高齢化のスピードが速く、2018 年には高齢社会に突入し、さらに 2050年には高齢化率が 38.2%になり、日本の高齢化率とほぼ変わらない状況となる。

韓国政府は長期的(2006 ~ 2020年)な人口政策として「低出産高齢社会基本計画」を発表し、2006年から実施しているがまだその効果が十分に表れているとは言えない。こうした中、出生率に大きな影響を与えている要因として考えられるのが昔から伝えられてきた「俗説」である。日本でも「ひのえうま」の年に出生率が1.58まで下がったように、韓国では縁起のいい年に出生率が上がっているのである。

では、最近の「縁起のいい年」と実際の出生率の関係を見てみよう。まず、1年に立春が二度やってくる、いわゆる双春年の年であった2006年には、婚姻数が前年に比べて25,000件近く増加し、出生率も1.08から1.12まで上昇した。婚姻数が増加し、出生率が上昇したのは「この年に結婚すると一生幸せな家庭が築けること」や「この年に生まれた子どもは一生健康で立派に育つ」という俗説があったからであろう。また、600年に一度の黄金の亥年と言われた2007年は、「この年に生まれた子どもは金運に恵まれる」と言われ出生率が1.25まで急上昇した。その後2008年と2009年は特に何の年でもなかったせいか、出生率はそれぞれ1.19と1.15で2年連続低下した。しかしながら2010年は60年に一度訪れる「白虎の年」に当たり、「この年に生まれる子は金の運がより強い」と言い伝えられ、再び出生率が1.23にまで上昇した。

では、今年2012年はどうだろうか。実は2012年は60年に一度の黒龍の年(龍が願いを叶え、昇天する特別な年)であり、出生率の上昇が期待されている。実際、韓国の統計庁が発表した「月別人口動向」によると今年の1月から4月までの婚姻件数は前年同期に比べて6,900件(6.65%上昇)も増加し110,700件に達した。黒龍の年は、「特に成功や発展をもたらすとされ、この年生まれの子どもは出世する」とも言われているので特別な事情がない限り、今年も出生率は上昇すると予想されている。

以上の結果だけを見て、政府が中途半端な人材や財源で少子化関連対策を行うより、俗説をうまく利用した方がより効率性が高いのではないかと考える人も多いだろう。しかしながら、俗説は希少性が大事であり、希少性を失うと俗説としての価値もなくなるだろう。現在韓国人の多くがこういう俗説に頼っている理由としては「有効な政策の不在」が考えられる。つまり厳しい市場環境の中で、現実の政策に頼れない人々が、理想として考えている希望がその俗説にはあるのである。

日本と韓国の政策はよく比較され、そのよしあしが語られているが、日本で長い間子どもを育てた経験から言うと、日本の政策が現実に機能していて、学ぶところが多い。韓国の政策立案家が「俗説」だけに頼らず、日本の制度を参考にしつつ、今後少子化に有効な国民が頼れる政策を実施することを望むところである

 
韓国における最近の婚姻件数や合計特殊出生率の動向

 
 韓国における主な人口調査は「住民登録人口現況」や「人口住宅総調査」が挙げられる。今回の「将来人口推計」の結果は「人口住宅総調査」に基づいて人口の変動要因(出生、死亡、人口移動)を考慮し作成されたものであり、韓国に居住している内国人や外国人を含めた結果である。一方、「住民登録人口現況」は地方自治団体や基礎自治団体に設置されている住民登録のネットワークを利用し、住民登録票に登載されている内国人の数で、外国に留学や就業で出国した人口も含めており、推計人口より多く現れる。実際「住民登録人口」は2010年に5千万人を超えている。
 本稿は国民基金連合会弓場美裕さんの未発表論文を参考としている。

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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

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