コラム
2012年06月27日

自転車の活用拡大に向けて-自転車をより安全なツールとするために-

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

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長年、自転車を運動不足解消の手段として活用している。土日に早起きをして高齢者がウォーキングを開始する前に、公園の中や川の堤防を走り回っている。近年、自転車の交通事故に関する報道も増え、実際に自転車を頻繁に活用する立場から色々感じることがある。以下では自転車走行中に遭遇するリスクと、自転車の効用拡大へ向けた安全確保といった点について乗り手の視点から述べてみたい。

まずは、近年の道路交通法改正(2008年6月)後の走行レーンについてである。自動車で混んだ車道を走ると交通状況に気を取られ、自転車走行が可能な歩道の標識を見落としがちである。また同一路線上の歩道でも、その幅によって走行禁止と走行可能な区間が混在することもあり、慌てることがある。
   普段、車道を走る際には、可能な限り自動車の走行の妨げとならないように道路の端ぎりぎりを走るようにしている。しかし、路肩に駐車中の自動車があるような場合は、突然のドア開閉にも注意が必要であることから道路中央よりを走らざるを得ず、大変なリスクに晒されることとなる。このほか、右脇をバスや大型トラックがぎりぎりで通過する際もスリリングでもある。混んでいる車道や狭い道路の端を自転車で走行するのは決して安全ではない。せめて混雑する道路には自転車走行が可能なレーンに、自動車の運転手や歩行者にとっても識別しやすい色で塗装できないだろうか。後述のように、一部ではそのような地域や区間もあるが、まだ少ない。

また、歩道と車道の境目の段差も自転車にとってはリスクである。近年、かなり改善されはしたが、車道から歩道への路線変更が必要な際に、傾斜がきつい段差へ浅い角度で乗り上げるような場合には転倒の危険を伴う。このほかにもリスクを認識する場面は多数あり、すぐ脇を猛烈なスピードですり抜ける悪しき運転マナーの自転車ライダーや、見通しの利かない角から左右を確認せずに飛び出してくる人や自転車も少なくないなど、挙げればきりが無い。自転車事故の報道は、一方的に自転車(の乗り手)が悪いという事例や内容が多いように思われるが、乗り手が潔白を主張しようと思えば自転車にも自動車並みにドライブレコーダ(車載カメラ)の装着を考える日が来るのかも知れない。

他方、リスクがあれば当然に安全確保の手段が必要である。徒歩に比べて自転車を活用するメリットは、行動範囲の拡大と時間短縮と健康への貢献に尽きる。一定の荷物や子どもの搬送にも利便性が高く、環境負荷が低い上に、有酸素運動による健康への良好な効果、さらに気分転換を含めたレクリエーションとしての効果も高い。しかし、これらとて、安全が確保できなければ画餅に帰すものである。
   日本の自転車乗用中の死者数が交通事故総死者数に占める割合は先進諸国の中で突出しているという残念な状況にある(以下に詳しい:基礎研レター 2012-05-31「自転車はどこを走るのか?」)。理想的対策としては、人、自転車、自動車の通行レーンの完全分離であろうが、都市部や主要幹線道路等の現状からすれば、限りある道路資源を3区分することは難しい。紹介レポートにあるモデル地区のように、車道を狭めカラーリングされた自転車専用道を設けることが可能な地域では、是非その施策を進めて欲しい。このほか、時間帯によって自転車と自動車のシェアする道幅を変更したり、限定したエリア・時間帯での自動車の速度制限などといったこともあろうが、むしろ混乱を来たす可能性もありそうだ。
   今後、全国のモデル地区で得られた知見や、さらなる工夫による道路の最適シェアの方法、あるいは、自転車専用道やサイクリングコースの拡充などを通じた自転車の効用拡大と乗り手・歩行者双方の安全確保に期待したい。そして、自転車の一ファンとしては、乗り手自身の運転マナー向上を自戒を込めて切に希望したい。

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社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年06月27日「研究員の眼」)

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