コラム
2012年06月25日

東京スカイツリーは首都・東京の「鬼門除け」?!-首都直下地震への備え

土堤内 昭雄

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東京スカイツリーがオープンして1ヶ月になる。開業後、周辺施設を含めて約581万人が訪れ、当初想定の年間3,200万人の来場者数も大きく上回りそうである。また、ツリー人気に乗じて“スカイツリー本”もたくさん出版されている。着工から完成までの建設物語やスカイツリー周辺の街歩き、地元の歴史・文化との関係など、様々な視点で東京の新たな観光名所を解説している。

先日、私が手にしたのは『東京スカイツリーと東京タワー~「鬼門の塔」と「裏鬼門の塔」』(細野透著、建築資料研究社)という一冊だ。この本では陰陽道による占いである風水の視点からスカイツリーの謎解きを試みている。家を建てるときに家相があるように、街をつくるときには昔から風水がよく使われており、古くは平安京が四神相応の地として造営された。

江戸は江戸城を守護するために、北東方向の鬼門に上野の寛永寺が造営され、南西の裏鬼門には同じく徳川家の菩提寺である芝の増上寺があった。現代の東京はというと、鬼門に東京スカイツリーがつくられ、裏鬼門に東京タワーがあり、風水的には鬼門と裏鬼門に日本を代表するふたつの電波塔が建っていることは興味深い。

では、この東京スカイツリーは本当に東京の「鬼門除け」になるのだろうか。現在、首都・東京に想定される最大の災難は「首都直下地震」だろう。東京都が公表した新たな被害想定では、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が冬の午後6時に発生した場合、死者は約9,700人、負傷者は14万7,600人、建物被害は30万4,300棟、帰宅困難者は約339万人となっている。

東京スカイツリーが立地する墨田区は、関東大震災や東京大空襲で大きな被害が出た地域だ。スカイツリーは同地区はじめ首都・東京の防災拠点として様々な機能を備えている。高さ260メートルの高さに設置された防災カメラからは、被災状況や避難状況を把握することができる。また、ここには災害備蓄倉庫が設けられ、3千人分の防寒着や23万人分の生活用水が蓄えられているという。

東京スカイツリーは災害時に災害情報を不断に発信する電波塔であり、「全ての電源喪失は想定外」といった“油断”はないだろう。ましてや現代社会において情報が途絶える“情断”は決してあってはならないのだ。東京スカイツリーは、裏鬼門に建つ東京タワーとともに首都直下地震に対する実質的な防災・情報拠点として確実に機能を果たすことで、はじめて首都・東京の「鬼門除け」のランドマークとして存立していることになるのではないだろうか。
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(2012年06月25日「研究員の眼」)

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