2012年06月01日

緊張感はしばらく払拭されず~マーケット・カルテ6月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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欧州情勢が再び緊迫度合いを高めている。5月上旬に行われたフランス大統領選、ギリシャ議会選挙の結果、これまで何とか組み上げてきた「緊縮財政による財政危機解決」というシナリオに疑念が生じたためだ。世界の金融市場ではリスク回避姿勢が強まり、株安・金利低下・ユーロ安が鮮明になっている。

筆者はギリシャのユーロ離脱の実現性は依然低いと見るが、市場は最悪の事態も織り込みつつ、少なくとも6月に行われるギリシャ再選挙後の動向を見極めるまでは、リスク回避モードでの様子見が続くだろう。従って、ユーロレートは底這う可能性が高い。円・ドルレートは、円もドルも共に危機時の資金逃避先として選好されることから方向感が出ず、膠着ぎみの推移が予想されるが、米国に失望するような経済指標が出ると一旦円高・ドル安に振れる局面も。その後、夏場を過ぎると欧州での危機回避の政治的合意が何とかまとまり、米景気についても底堅さが確認され回復期待が高まることから、円高圧力が軽減し、円はドル、ユーロに対してやや下落すると見る。

長期金利についても、リスク回避的な債券需要からしばらく低位で推移すると見る。ただし、現在の水準は下げ過ぎている感があり、市場の警戒感も強い。夏場以降にはユーロ圏に対する緊張感の緩和と米景気回復期待に伴う米金利上昇に伴って上昇し、半年後の金利は現在よりも高い水準にあると見ている。




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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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