コラム
2012年05月28日

日本男子テニスの成功体験

経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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男子テニス世界1位のジョコビッチがユニクロと5年間のスポンサー契約を結んだ。ユニクロと言えば、日本のエース錦織圭選手とも契約を結んでいる。5月末から行われている全仏オープン、錦織選手は怪我のため欠場となったが、実は添田豪選手、伊藤竜馬選手の二人も本戦ダイレクトインしている。
   錦織選手に注目が集まるが、日本の男子テニスはここ数年急速に力をつけてきている。
   長年、日本のテニスを支えてきたいろいろな方の努力があった上に、テニスプロを目指す人、ジュニアにとって錦織圭選手という「スター、成功者、成功体験」ができた。
   同じ日本人として「やれる!」と選手(年上の添田選手や同年代の伊藤選手などはあまり影響を受けた側とは言えないかもしれないが)、コーチ、ジュニア、みんなが思うことで、新しい「強い選手」が生まれてきて、それを見てさらに「強い選手」がでてくるのだ。筆者もテニスが大好きだ。HP、雑誌などで日本人の活躍を見るとうれしく、自分もなんだかやれる?と思ってしまう。

翻って日本を考えた場合、いろいろな業界で新しい成功例が生まれにくくなってしまった。
   日本産業、経済の底上げに向けていろいろな政策が、着実に実施されなければならない。しかし、規制緩和ひとつとっても利害関係が入り乱れそのスピードはいっこうに上がらない。日本全体での議論は着実に進めるとしても、もっと別の突破口を作らなければならない。
   錦織選手は、日本テニス協会元会長・盛田正明が運営する「盛田正明テニス・ファンド」の対象選手となり、米国(IMGニック・ボロテリー・テニスアカデミー)でテニスの修行を積んだ。小さい頃から才能がずば抜けていたのだろうが、日本テニスのため「個人」が支援を受けた。
   日本もメリハリをつけるべきだ。例えば復興特区はもっともっと規制緩和を起こし、成功体験を作らなければいけない。強烈なメリハリをつけ、ひとつでも1社でも、1人でも「世界に通用する成功例」をたたき出すべきだ。そうすればみんなが「やれる!」と思うはず。

若者は現在の生活に対する満足度が高いという。自分自身がおじさんになった証拠かもしれないが、若年層の失業問題、非正規問題、年金問題などなどを考えると「満足度が高い?これでいいのか!」と思ってしまう。先日大学4年生と話していたら、生まれが1990年。「生まれてから、大きなトレンドでは日本経済の衰退、資産価格低迷、雇用所得環境の悪化など、右下がり・低位安定の世界。これが当たり前との印象をもっている」といわれた。
   日本経済・金融市場はよく「異常だ」との議論がある。しかし若年層にとっては、今が「正常、ふつう」であり、昔が「異常」と言えるのかもしれない。
   でも、日本のこの衰退を「当たり前」のものにしてはだめだ。ひとつでもいいから、成功例を作らなければ、、、逆説的になるが、ひとつの象徴的な成功例を作れば日本は爆発的に成功する。

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経済研究部   チーフエコノミスト

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

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