2012年05月23日

貿易統計12年4月~貿易収支の黒字化は当面見通せず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易収支(季節調整値)は14ヵ月連続の赤字
・米国向け自動車輸出が好調

■introduction

財務省が5月23日に公表した貿易統計によると、12年4月の貿易収支は▲5,203億円と2ヵ月連続の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲4,726億円、当社予想は▲4,929億円)通りの結果となった。輸入が前年比8.0%(3月:同10.6%)と伸びが鈍化する一方、輸出が前年比7.9%(3月:同5.9%)と前月から伸びを高めた。ただし、輸出の伸びが前年に比べて高めとなったのは、昨年4月が東日本大震災による供給制約の影響で急速に落ち込んだ反動による部分が大きい。4月の輸出を季節調整値で見ると、前月比0.5%とほぼ横ばいにとどまっており、実勢としては輸出の回復テンポは緩やかなものにとどまっている。
季節調整済の貿易収支は▲4,802億円と14ヵ月連続の赤字となったが、3月の▲6,166億円からは赤字幅が縮小した。輸入が前月比▲1.7%の減少となったことが赤字幅縮小に寄与した。
4月の輸出数量指数(当研究所による季節調整値)を地域別に見ると、米国向けが前月比▲4.0%、EU向けが同▲4.0%、アジア向けが同▲5.6%、全体では同1.0%となった。主要3地域向けがいずれも低下したにもかかわらず全体が上昇したのは、産油国を中心としたその他地域向けが好調を維持しているためである。また、米国向けは比較的大幅な低下となったが、前月まで高めの伸びが続いた反動によるところも大きく、基調としては回復傾向が続いていると判断される。一方、EU向け、アジア向けは欧州の景気後退、アジア経済の減速を反映し、実勢として低調な動きが続いている。
4月の貿易収支(季節調整値)は前月から若干改善したが、依然として大幅な赤字となっている。先行きについては、輸出の回復ペースが当面は緩やかなものにとどまる一方、液化天然ガスを中心とした輸入価格の高止まりが見込まれるため、2012年中は貿易赤字が継続すると予想している。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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