コラム
2012年05月14日

あってもいいんじゃない?クールビズ手当て

金融研究部 チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任   井出 真吾

文字サイズ

東京電力は先週11日、家庭向け電気料金の引き上げを経済産業省に申請した。引き上げ率は平均約10%で、申請どおりに認可されれば、標準家庭の場合は月に480円(6.9%)上がって7,453円となる。また、今回の申請には主に中小企業が利用する電気料金も含まれるそうだ。こちらは夏季(7月~9月)とその他季(10月~6月)で料金設定に差が設けられている。夏季は18.2%、その他季は16.5%の値上げで、既に4月から順次実施されている大企業向け料金の平均17%値上げとほぼ同じ水準だ。

多くの企業や家庭は昨年から節電に取り組んでいる。言うまでもなく節電すれば電力会社に支払う料金も減るので、家計の負担や企業の経費が減る。ここで少し考えてみたいのは、企業の節電によって浮いた経費の扱いである。単純に考えて、節電で浮いたお金を別の用途に使わなければ、その全額が企業の利益になるが、これは株主に帰属するとも言える。しかし、通勤電車やオフィス・工場内の空調が以前より高く温度設定されるため、その対策として衣料品などクールビズ商品を購入しても、その費用の多くは個人負担(家計負担)であろう。どこか引っかかる。

企業が30%節電したケースで計算してみよう。節電前の月間料金を100とすると、今回の値上げ(17%)が実施された場合の料金は81.9となる(=100×0.7×1.17)。つまり、値上げ後でも企業は従前の電気料金と比べて2割弱に相当する経費を抑制できる計算だ。企業側も新設備の導入など節電対策で新たに発生する費用もあろうから単純には済まないかもしれないが、もし節電で浮いた“特別利益”があるなら、その企業で働く人々に還元してもよいのではないかと思う。しかし、こうした例は少ないようだ。1人あたりの支給額は多くなくても、クールビズ商品を購入するための個人負担をある程度軽減できるはずだ。

そういえば昨年の夏、ある大企業の経営者が自身のブログで、「自分は節電中も常にネクタイを着用している。そもそもそんなに暑いか?」とクールビズに苦言を呈していた。これを拝読したとき筆者はこう思った。「ええ、暑いですよ。実態を存じ上げないので想像で申し上げますが、そりゃあ、あなたのように職場には広い個室があって、通勤や移動は運転手付きの専用車、外出先でも丁重な待遇というお方は暑くないかもしれませんね。ところで、そのお言葉、御社の工場に勤務している方々や、営業で炎天下を歩き回っている方々に正面から言えますか?」

66_ext_01_0.jpg

金融研究部   チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任

井出 真吾 (いで しんご)

研究・専門分野
株式市場・株式投資

レポート

アクセスランキング

【あってもいいんじゃない?クールビズ手当て】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

あってもいいんじゃない?クールビズ手当てのレポート Topへ