コラム
2012年05月09日

60歳代後半の「働き方」(その2)-期待される地域における多様な受け皿の創出-

社会研究部 准主任研究員   青山 正治

文字サイズ

「2007年問題」が注目された頃と「2012年問題」の時期を迎えた現在の社会状況を比較すると、世の中の状況は大きく変化した。2008年秋のリーマン・ショック、2011年3月11日の東日本大震災、原発事故、財政の悪化、今後の複数の大地震発生予測など、生活実感は厳しさを増す傾向にある。この局面で退職期を迎える人の多くは、年金を受け取りながらも一定程度、又は家計維持のためにフルに働くことを予定している人も多く居よう。また、将来の介護や医療の費用増を見据えて、元気で働けるうちは働こうという人も多く居よう。

過去、定年退職後に定年前とは異なる仕事で再就職をした人に話を聞く機会があり、そのエピソードの一つを紹介する。それは定年まで製造業で頑張って働き、引退後は趣味の「魚釣り三昧」人生を計画していた人の話である。退職後、以前からの念願であった「魚釣り三昧」人生を、晴れ晴れとした気分でスタートし、1ヶ月ほど連続で釣りに出かけたが、1ヶ月を過ぎた頃から大好きであったはずの魚釣りが砂を噛むように味気なく感じるようなったという。その後、夜勤もある仕事に再就職したそうで、再就職後の個人的感想を尋ねると、「緊張感を伴う一定の職務を果たすことでこそ、趣味は価値がある」との主旨のコメントであった。悠々自適で自身の趣味を時間の際限なく行える生活は、一般的には「夢」でもあるが、その継続というのは、経済面でなく、別の面で予想外に難しいのかも知れない。そうでない人も居ようが、その場合は道楽という言葉が適しているのかもしれない。
   また、退職後の計画を持たない人の場合は、テレビと昼寝と家族の小言が生活必須アイテムとなる可能性もある。しかし、これらアイテムを必要とすることが長期化すると、外出が億劫となり、やがて引きこもり状態になると心身に悪影響を生じる可能性もある。その回避策としては、自身が生きがいを実感できるようなQOLを高めるための何らかの取り組みや活動が必要となろう。また、高齢者の持つ高い潜在能力を生かさないまま放置することは社会的な損失とも言えよう。

筆者は、60歳代後半の「働き方」について、企業に所属して働く「第一の働き方」、独立して働く「第二の働き方」、シルバー人材センターの活用や有償/無償ボランティアなど多様な形態を含む「第三の働き方」に整理して考えている。これらの内、「第三の働き方」は、内容が多岐にわたることからその主な選択肢についての情報提供も試みている(ジェロントロジー ジャーナルNo.11-023)。

高齢期の働き方については、地域社会に密着し、その地域のニーズや課題解決に対応する働き方の創出が可能ではないだろうか。高齢期では、ある程度、年金等で生活資金が確保されているからこそ、自分の働きが生活維持のための経済的なリターンのみならず、社会問題の解決につながる社会的なリターン創出をも追及する形で働き方が選べる立場にあるといえよう。これを支援する意味では、高齢者自身、支援団体、あるいは政策当局が意識的に、地域の地方公共団体や様々な既存の団体や企業とも連携し、新たな高齢期の就労や活動の受け皿を創り出していくことも重要であろう。
   人生80年時代となった現在、高齢者自身のQOLを高め、同時に、高齢者の高い潜在能力を社会に還元するための「働き方」の多様な選択肢を用意する必要がある。このことが、高齢者が生み出す社会的リターンが次世代をサポートできる仕組みの構築につながると信じている。

62_ext_01_0.jpg

社会研究部   准主任研究員

青山 正治 (あおやま まさはる)

研究・専門分野
少子高齢社会・社会保障

(2012年05月09日「研究員の眼」)

レポート

アクセスランキング

【60歳代後半の「働き方」(その2)-期待される地域における多様な受け皿の創出-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

60歳代後半の「働き方」(その2)-期待される地域における多様な受け皿の創出-のレポート Topへ