コラム
2012年05月07日

動物園に行こう-オリの中に見えること、オリの中から見えること

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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このゴールデンウィークに動物園に出かけた人も多いだろう。昨年度の東京・上野動物園の入園者数は例年の1.6倍にもなる470万人を超えた。昨年4月1日からジャイアントパンダが一般公開されたことが寄与しているようだ。私も今年4月上旬、桜が満開の上野動物園に行ってみた。園内はベビーカーに小さな子どもを乗せた家族連れやお年寄り夫婦、若いカップルなど多くの人で賑わっていた。

特にパンダ舎の前は多くの人が集まっていた。メスのパンダ・シンシン(6歳)は活発に動き回っていた。一方、オスのパンダ・リーリー(6歳)はじっと地面に寝そべったまま、観客の存在すら気づいていないようだ。今年3月の繁殖期には2頭を同居させ、交尾行動も確認されたそうだが、その結果はいかに・・・。メスのシンシンはストレスを抱えているのか、マタニティブルーなのか、木に登ったり転がり回ったり、笹をかじったりと何か落ち着かない様子だ。動物園では動物を見ている人の様子を見るのも面白い。パンダの愛嬌ある動作に大人が子ども以上の歓声を上げたりしている。

ゴリラ園舎に行くと、巨漢の親ゴリラとかわいい子どもゴリラがいた。まとわりつく子どもゴリラを上手にあしらいながら面倒をみている親ゴリラ。最初は観客に背を向けていたが、やがて子どもと遊ぶうちにこちら側を向いた。そのなんとも優しそうな目が印象的だ。人間社会ではあちこちで児童虐待が起こっているというのに・・・。オリの中と外ではどちらが幸せなのだろうと「ふと」思う。

動物園は動物の生態を観察するところだが、そこでは見られる側の動物を通して、見ている側の人間社会の生態も垣間見える。狭い飼育場でストレスをためているようにもみえる動物たちの動きには、様々な制約を受けながら暮らす現代人の生活が重なる。あの優しいまなざしの親ゴリラには、オリの外にいる人間の表情や子育てはどのように写っているだろう。「人間はずいぶん険しい顔つきで子どもを見ているんだなぁ」とオリの中から思っているかもしれない。

久しぶりに動物園に出かけ、人間社会が複雑に変容する中で、改めて動物の一員としての人の暮らし方を考えてみた。ユニークな語釈で知られる三省堂・新明解国語辞典(第7版)には、「動物園」とは「捕らえて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌とにより野生から遊離し、動く標本として一般に見せる、啓蒙を兼ねた娯楽施設」とあるが、そこに「人間社会の課題を発見・再確認する施設」を付加してもよいのではないかと思う。みなさんにとって動物園の「オリの中に見えること」、「オリの中から見えること」とは何でしょう。とりあえず、それを探しに「動物園」に行ってみませんか。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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