コラム
2012年04月26日

2012年問題と人生100年時代のライフデザイン

生活研究部 主任研究員   前田 展弘

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2012年度の1つの出来事と言えば、団塊世代(1947-49年生まれ)が65歳に到達してその多くが最終定年を迎える「2012年問題」がある。「問題」というほど社会の関心を集めている状況にはないが、団塊世代の一人ひとりの個人にとっては重要な問題であろう。すべての団塊世代にあてはまる話ではなく、今に始まった話でもないが、会社員の多くにとって定年という人生の節目は人生にとって大きなインパクトがある。残された「長い」人生をどのように再設計するか悩まれている方も少なくないのではないかと推察する。

この問題(事象)は、個人の人生、産業界および地域社会を含め、様々な領域に影響をもたらすが、その問題の根源を突き詰めると、長寿社会における人生モデル(ライフコース)の確立が未成熟である、ことが一つ挙げられる。20世紀後半のいわゆる寿命革命(平均寿命が30歳延長したこと)により、日本人の多くは人生90-100年に及ぶ長寿の可能性を手に入れたにも関わらず、その長さに見合った「生き方」が未だに確立できていない。同時に社会保障制度及び雇用制度も然り、社会システム全体も人生60-70年時代のころから長寿社会に適合する形に変更ができていない。

今更ながら「人生100年を前提とした生き方とは何か」、そのことを追究し明らかにしていかなければならないときを迎えているように思う。その生き方モデルを構築して、その実現に向けて社会が道を示す(教育・啓発する)ことは、国民一人ひとりの人生や産業界・地域社会の発展にも意義あることと考える。このような課題認識のもとで、筆者も所属している東京大学ジェロントロジー・ネットワーク(東京大学高齢社会総合研究機構が推進する産学連携組織。産業界から57社が加盟)では、2011年度に「長寿社会のライフデザイン研究会」(ニッセイ基礎研究所が運営)を立ち上げ、1年間をかけてこの課題について議論を重ねてきた。50歳からの後半人生に焦点を当てながら、定年後の11万時間という長い時間があれば様々な人生の可能性(選択肢)があり「多毛作人生」が可能である、という基本認識のもとで、どのような「生き方ニーズ」が存在していて、どのように再設計すべきかを追究した。これは言わば、大人版の「将来何になりたいか?」、その生き方ニーズを明らかにした研究活動である。

その結果、「Aging in My Place ~生涯にわたって、活躍できる、心安らかに過ごせる自分の居場所を構築する~」を理想の概念に置くなかで、「I活躍の仕方」「II暮らし方」「III人とのつながり方」「IV楽しみ方(含、転身)」の4つの人生設計領域から暫定的に28の生き方ニーズ(モデル)を描き出した。例えば、「I活躍の仕方」においては、地域社会に貢献したい“地域貢献生活”、趣味を高齢期の仕事につなげたい“趣味を実益化生活”、「II暮らし方」では、自然の中で暮らしたい“自然回帰生活”、いろいろな地域での暮らしを楽しみたい“転々異文化味わい生活”、「III人とのつながり方」では、夫婦(家族)での楽しみを追求したい“夫婦・家族円満生活”、共通の趣味の仲間と過ごしたい“選択縁生活”、「IV楽しみ方(含、転身)」では、次世代への宣教師・継承者になりたい“経験伝承生活”、リタイア後はアートに生きる“アート生活”等である。実際の人生設計場面では、これらの生き方ニーズが組み合わせられることになる。

それぞれの生き方ニーズは、非常にシンプルな内容ではあるが、リタイア後の生活イメージを漠然と考えている(いた)人にとっては、後半人生の選択肢(可能性)として、このようなことがあるかということを知れることは、自分らしいより豊かな長寿を実現していく上で役立つに違いない。またこうした人生設計の検討は、団塊世代をはじめとする中高年に限らず、むしろ若い段階から将来を見据えてイメージしていくことが望ましい。一人でも多くの方の人生設計をサポートしていきたいと考える中で、今回の研究成果については「人生100年時代の生き方ヒント集」としてまとめ、改めて社会に向けて発信していきたいと考えている。




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生活研究部   主任研究員

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

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