コラム
2012年04月26日

ご馳走しあうことで「絆」を深めよう!― 無縁死や孤独死の減少を期待する ―

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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来日して感じた大きなカルチャーショックは、1人で食事をする人の多いことや、「割り勘」が一般的になっていることであった。働く女性のうち、1人で昼食を食べる人の割合は44.8%(2007年の日経WOMANの調査結果)にも及ぶし、最近は草食男子や弁当男子など、一人で昼食を食べる男性も増加してきている。

筆者が韓国にいたときには、学校や会社で1人で昼食を食べることは滅多になかった。さらに夜になると大勢で集まり食事を楽しんだ。二人で食事をするときにはご馳走しあうことが多く、また、大勢で食事をするときには、その日の主役(例えば誕生日を迎えた人)がご馳走をすることが一般的であった。先輩は後輩によくご馳走をし、後輩はまた、自分の後輩にご馳走をする。まさにご馳走の継承であり、このようなご馳走の文化が絆を作り人々を孤立感から守っていたと思われる。

では、最近の韓国はどうだろうか。韓国出張の際に、人と会えない時などは、一人で昼食を食べることもあるが、周りはグループなど複数で昼食を食べる人ばかりで一人で食べている人は私以外には見あたらない。私は周りの視線が気になり、なかなか食事が進まない。

韓国は今でも皆で昼食をとる習慣が残っている。しかしながら、私が韓国にいた十数年前と比べて少し変わったのは、レジの前の揉みあいが少なくなったことである。一昔前には、「今日は私が払う」、「いや私が」という言い争いが、会計の際に頻繁に聞こえたが、最近はそういう風景を見ることも少なくなった。すなわち、韓国にも「ご馳走の文化」に変わって「割り勘文化」が普及してきたのであろう。

2010年に韓国の会社員を対象にした昼食代の支払いに関する調査によると、「自分の分は自分で払う」と答えた割合は51.5%で最も多かった。一方、回答者の27.6%が、現在でも「仲間同士で順番を決め、ご馳走しあう」と回答し、4.7%は「主に先輩がご馳走をしてくれる」と回答した。「割り勘文化」は、海外への留学経験がある若者の増加や、個人主義の普及などにより広がってきたのであろう。

日本も以前はご馳走の習慣が今よりもあったが、バブル崩壊により、経済の低迷が続く中、そういう習慣がだんだんなくなっていったと知人から聞いた。ここで筆者は新しい「ご馳走」の文化を提案したい。グループ同士で一緒に食事をし、順番に昼食代を払う仕組みを作り、最初は週1~2回の頻度でやってみればどうだろうか。一日だけを考えると、払う人が損をすることになるが、順番に「ご馳走」の行動を繰り返すと、結局は自分が自分のお金でご飯を食べていることと同じ結果になる。「割り勘」をした時と支払う金額は変わらず、さらに上司や仲間、友達や地域住民などとの「絆」というボーナスがいただける。

人との付き合いによる幸せは、日頃からの付き合いを大事にしてこそ得られるものであり、ある日突然現れるものではない。一緒に食事をしながらご馳走しあうことは、忙しい日々をすごしている現代人には面倒かもしれない。しかし、それをすることにより絆が生まれ、大げさではあるが将来的に「無縁死」や「孤独死」を減らすことに繋がるのではないだろうか。

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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

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