2012年04月20日

南欧の苦境を象徴するスペイン~混乱回避も南の負担緩和のための即効性があり強力で明快な対策は期待できず~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. ユーロ危機の第三幕の最初の主役となったスペインでは、ラホイ政権が財政赤字削減策のほか、金融システム健全化、労働市場の二重構造解消に手を打っているが、市場は成長と雇用への負の影響への懸念を強めている。
  2. スペインは南の苦境の象徴であり、イタリアに再び市場の矛先が向かう可能性も決して低くない。ギリシャの総選挙、フランスの大統領選挙、アイルランドの国民投票、ポルトガルの追加支援問題の決着が期待を裏切り、市場の緊張が一段と高まる可能性もある。
  3. しかし、ギリシャのPSIに備えて防火壁強化が進展、ECBの3年物資金供給が金融機関の資金繰りをサポートしていることから、大規模な混乱は回避できるだろう。
  4. 危機の第三幕は域内の経常収支不均衡と競争力格差調整の負担を専ら南が負う構図を改めなければ終わらない。北の経常黒字国の拡張的財政政策の転換は考え難いが、財政健全化による景気下押し効果は縮小、超金融緩和政策の継続も格差調整に効果を果たそう。
  5. この先もユーロ危機への即効性があり強力で明快な対策は期待できないが、ユーロやEUが崩壊に向かっていると考えるのは早計だ。問題は時間をかけて解決されるだろう。



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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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