コラム
2012年04月02日

首都直下地震と「キュウカンチョウ」―新たな帰宅困難者への対応

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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昨年3月11日の東日本大震災では、首都圏で約515万人、東京都で約352万人の帰宅困難者が出た。多くの企業が発災後「早く帰宅するよう」呼びかけたこともあり、駅や道路は帰宅を急ぐ人であふれ返った。しかし、そこには2次災害の恐れも多分にあったのだ。

依然として日本列島の地震活動は活発であり、首都直下地震がいつ起こっても不思議ではない。その時はより多くの帰宅困難者の発生が予想される。そこで東京都は3月29日「東京都帰宅困難者対策条例」を可決し、来年4月1日から施行する。条例では地震発生時に一時滞在施設を確保して一斉帰宅を抑制し、「むやみに移動しないよう努めること」を決めた。そのため都内の中小企業も含めた全企業に対して従業員の3日分の飲料水と食糧の備蓄を努力義務として求めている。

さて、先日、わが家に「キュウカンチョウ」がやって来た。それは消費税込み1万2千円の非常用のパンの缶詰で、「救缶鳥」と書く。ひと缶に菓子パン200グラムが入っており、15個が1セットだ。賞味期限は3年で、味はオレンジ、レーズン、いちごの3種類がある。

この「救缶鳥」は2年経過すると更新の案内がくる。もちろん非常時にはこれを食すのだが、2年間無事に何事もなければ、新しい「救缶鳥」に交換する。再購入すると、配達時に缶鳥を1個100円で引き取ってくれる。まだ賞味期限が1年残っている缶鳥は全国各地から回収された後に、日本国際飢餓対策機構等を通じて食糧難で困っている国々に届けられる。「救缶鳥」は少なくとも消費期限内であれば湯で温めると柔らかい食感があり、防腐剤も使っていない健康に配慮した食品だという。缶には支援先への応援メッセージも書くことができる。

これまでわが家では非常食として缶詰を備蓄していたが、気がつくと賞味期限が切れており、もったいないと思いながらも廃棄していた。しかし、この「救缶鳥」はこれまでの廃棄処分のコストが省ける上に、多くの食糧難の国々で有効に活用される。地球上では5歳未満の子どもが6秒に1人の割合で飢えのために命を落としているという現実を考えると、その意義はとても大きいだろう。

これから首都直下地震の帰宅困難者対策として多くの企業が食糧の備蓄を始める。個人とは違いその量は桁外れに多いと思われるが、くれぐれも賞味期限が切れて廃棄することにならないようにしたいものだ。非常時の食糧備蓄のちょっとした工夫が日本と世界を救うことになる。わが家の「キュウカンチョウ」は、家の片隅で“YOU CAN(缶) SAVE(救)”と鳴いている。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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