コラム
2012年03月29日

少子社会のなかで増え続ける大学、その未来は?

  大山 篤之

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平成19年あたりから全入時代の到来がささやかれ始めた。事実、日本私立学校振興・共済事業団によると、平成23年度時点で私立大学(集計学校数572校)の39%が定員割れを起こしていると指摘された。そして、今後の急速な少子化により、50年後には18歳人口が現在(約120万人)の半数弱(約60万人)にもなるという試算(国立社会保障・人口問題研究所)もある。

そんな最中、文部科学省の学校基本調査によると大学の数は、平成20年度765校、平成21年度773校、平成22年度778校、平成23年度780校と微増の現状をご存知だろうか?また、日本の大学は、長い間、国の介入(大学等の新増設における原則抑制)という形で皮肉にも手厚く護られ、ある種独特の「事なかれ主義的」大学経営が横行することとなった。この結果、リスクを有する変革に即座に対応できる大学は少なく、競争激化の渦中にある多くの大学の倒産が一斉に記事に踊る日も来るかもしれない。

しかし、この厳しい状況を踏まえ経営改革を推し進めようと動き出している大学もある。例えば、日本高等教育学会等の日本の各関連学会で、IR(Institutional Research)というセッションを最近になってよく目にするようになった。IRというと企業経営者による投資家向けの広報活動(Investors Relationship)を思い浮かべる方も多いだろう。後者のIRが外向けの情報発信である一方、前者のIRは外向けの情報発信の要素もあるもののどちらかというと内向けの情報収集がメインと考えればわかりやすいかもしれない。これにより、逆境にある日本の大学が、大学の本質的ミッション(大学価値の増大と理念の継続)はそのままに、『情報の収集と分析結果の集約』からリスクを最小に抑えつつ、迅速かつ戦略的な意思決定をおこなおうとしている。IRとは、まさに改革を見据えた大学組織における諜報機関のようなものなのかもしれない。

どんな分野でも、逆境から驚くような成功を収める組織や経営者が現れ、時代の寵児となることはよくあることである。数多くの大学が逆境に置かれている今だからこそ、革新的な大学が現れる可能性も高いといえるのではないだろうか。そして、そうした大学が日本の将来を担う個性豊かな人材をはぐくむ土壌となることを切に願っている。


 
短期大学を含む高等教育機関の収容力(「入学者数」を「志願者数」で除したもの) が100% に達する状況

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