2012年03月26日

若年層の経済的余裕感<消費離れ・厳しい雇用情勢の今どきの若者たち、暮らし向きの実感は?>

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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  • 20~34歳の若年層で非正規雇用者が増加している。年収は正規雇用者より各性年齢階層で60~140万円ほど少なく、厳しい状況である。一方、正規雇用者の年収も10年前より減少している。年収の高い50歳代後半で男性は3/4、女性は2/3へと減っており、若年層にとっては将来に対して明るい見通しを持ちにくい状況である。一方、若年層ではクルマなどの高額消費志向が強くなく、周囲には安価で良質なモノもあふれている。実際のところ、現在の若者は自分達の経済状態にどれくらい余裕を感じているのだろうか。ニッセイ基礎研究所「平成22年度生命保険マーケット調査」のデータを用いて検証していく。
  • 現在の経済的余裕感を5段階で尋ね、上位2つを余裕層、下位2つを余裕なし層とすると、20歳代では他年代より余裕層も余裕なし層も多く、二極化傾向が窺える。30歳代では経済的負担の伴う人生の決断が多いせいか、余裕層でも余裕なし層でもない「どちらともいえない」が多い。年齢とともに余裕層は増え、余裕なし層は減る。いずれも女性の方が男性より余裕層は多いが、この背景には家族の扶養に対する義務感や家計の把握状況の性差がある。
  • 若年層について就業状態別に余裕感をみると、正規雇用か非正規雇用かを軸に違いがあらわれる。婚姻状態とあわせてみると、余裕を感じているのは正規雇用の共働き夫婦、正規雇用の独身男性、正規雇用で高収入の夫を持つ専業主婦などの世帯年収の高い層が多く、余裕のなさを感じているのは非正規雇用の特に未婚男性である。
  • 若年未婚者の親元同居状態別に余裕感をみると、男性では余裕なし層の方が同居率は高く、女性では余裕層の方が同居率は高い。男性では非正規雇用で経済的余裕がないために親と同居しているが、女性では親と同居しているために経済的余裕を感じるという逆方向の因果関係が働いている可能性がある。この背景には扶養されることへの抵抗感の性差がある。
  • 若年層の経済的余裕感は正規雇用か非正規雇用かを軸に二極化傾向がみられた。中高年の常識では、経済的余裕のなさや同世代間の二極化は不幸なことだと捉えられがちだ。しかし、実は若年層の7割は今の消費生活に満足しており、幸福感も他年代より高いという報告もある。何らかの消費市場においてターゲットを定める際、経済的に余裕のある層をそのままメインターゲットとし、市場の牽引を期待することが多いが、現在の若年層はそう単純ではないようだ。若年層を更に紐解くには、世代の特徴的な思考も捉えていく必要があるだろう。



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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

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