2012年03月26日

J-REIT市場10年の軌跡と今後の成長要件~米国REIT市場の発展に学ぶ~

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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  • 昨年9月に10周年を迎えたJ-REIT市場は、金融市場と不動産投資市場を結ぶ結節点となり、(1)小口投資家に不動産賃貸事業へのアクセス機会を提供、(2)安定した不動産賃貸キャッシュフローを分配金として投資家に還元、(3)不動産投資市場へのリスクマネー供給、という3つの役割を期待されて誕生した。
  • J-REIT市場の果たした10年の功績は高く評価できる反面、課題も残る。次なる10年の目標である時価総額10兆円を実現するには、より広い範囲から多様な資金を呼び寄せて、J-REITが優良不動産を取得しやすい環境整備を図り、投資家とREIT事業者双方にとって魅力溢れる市場へと成長することが求められる。
  • 50年以上の歴史を持つ米国REIT市場は、中長期にわたる良好なパフォーマンス(年率11.9%)が投資家の信頼を高めて世界中から投資資金を引き寄せており、株式投資並びに不動産投資の一環として投資家に認知されている。
  • また、不動産の原所有者が不動産をREITに売却する際に売却益を繰り延べできるUP-REIT制度が経済的インセンティブとなり、非上場不動産会社のREIT転換やREITによる不動産の取得を促進し、1990年代に始まる加速度的成長を後押ししている。
  • 今後の運用不動産の拡大や投資家層の多様化に向けて、米国REIT市場の発展に学ぶことは多いが、それぞれに異なるローカルな市場慣行や発展の経緯がある。そのため、J-REIT制度の見直しにあたっては、米国制度を模倣するのではなく、REITの理念に立ち返りその役割・機能をより確かなものとする取り組みも大切になる。



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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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