2012年03月08日

EUの持続可能な発展戦略に見る人口減少・高齢化対応―債務危機に阻まれる戦略の実現

経済研究部 上席研究員   伊藤 さゆり

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■見出し

1――はじめに-欧州連合(EU)の持続可能な発展戦略(SDS)-
2――EUのSDSの進捗状況
3――人口減少・高齢化対策としてのSDSの進捗状況
4――おわりに

■introduction

欧州連合(EU)の基本条約には「アムステルダム条約(1997年10月調印、1999年5月発効)」以降、「持続可能な発展の原則」という文言が盛り込まれている。世界的には1992年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際連合会議(通称地球サミット)」における持続可能な発展のための21世紀に向けた行動計画「アジェンダ21(リオ宣言)」の採択が持続可能な発展への転機と位置づけられるが、EUレベルの取り組みはそれに先立つものである。さらに、「アジェンダ21」後は、EU加盟各国で「持続可能な発展の国家戦略」策定の動きが広がり、EUのレベルでは2001年6月にイエテボリ(スウェーデン)で開催されたEU首脳会議で「持続可能な発展戦略(Sustainable Development Strategy, 以下SDS)」が採択、2006年6月のEU首脳会議での改定を経て現在に至る。
EUのSDSは、「経済発展と環境保護と社会的公正」のための政策を統合し「現代世代と未来世代の双方にとって生活の質と幸福を継続的に改善する」戦略である。EUはSDSの採択に先立つ2000年3月にリスボン(ポルトガル)で開催されたEU首脳会議で、2010年までに「世界で最も競争力があり、かつ力強い知識基盤経済社会(knowledge-based economy and society)を構築する」10カ年計画「リスボン戦略」を採択、2010年にはこれを引き継ぐ「ヨーロッパ2020」を立ち上げている。
「リスボン戦略」は、競争力強化、経済成長と雇用創出に重点を置くもので、先行するSDSとは相互補完的な関係と位置づけられたが、「ヨーロッパ2020」は、知識とイノベーションを基盤とする「賢い成長」と「持続可能な成長」、「包括的成長」の3つを優先分野と位置づけるSDSとの整合性がより強い内容である。数値目標も「ヨーロッパ2020」では就業率、研究開発投資(R&D)投資の対GDP比率という「リスボン戦略」から継承された目標に、新たに環境や社会的公正に関わる目標が加えられ、「環境と成長のトレードオフ克服」と「経済成長に基づいて社会的公正の実現を目指す」性格が強い(図表1)。
2012年はリオの地球サミットから20年、地球サミットから10 年後にヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界サミット」から10年目の節目であり、6月20~22日にはリオ・デ・ジャネイロで「リオ+20の国際連合会議」の開催が予定されている。EUのSDSにとっても節目の年となるが、残念ながら同時不況からの回復の遅れ、ユーロ圏の債務危機が影響し、捗捗しい成果は見られない。
以下では、EUのSDSの概要を整理した上で、これまでの成果、人口減少・高齢化対策としての進捗状況を踏まえ、今後の課題について考察した。

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経済研究部   上席研究員

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州経済

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