2012年03月02日

雇用関連統計12年1月~乖離する失業率と有効求人倍率の動き

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・失業率は前月から0.1ポイント上昇の4.6%
・ベンチマーク人口の切替えによって生じた問題
・労働需給の改善傾向が鮮明となるが、地域間のミスマッチが残存

■introduction

総務省が3月2日に公表した労働力調査によると、12年1月の完全失業率は前月から0.1ポイント上昇し4.6%となった。労働力人口が前月から27万人の減少となるなか、就業者数が35万人減とそれを上回る減少となったため、失業者数は前月に比べ9万人の増加となった。この結果を額面通りに受け取ると、就業意欲喪失者(ディスカレッジドワーカー)と失業者が同時に増えていることを意味し、非常に悪い内容と言える。
しかし、労働力調査は月々の振れの大きい統計であることや、労働市場の需給バランスを反映する有効求人倍率は明確な改善傾向が続いていることを考えれば、今月の労働力調査の結果から雇用情勢の基調を判断するのは危険である。
労働力調査のベンチマーク人口には「人口推計」が用いられているが、人口推計の基準が2005年国勢調査から2010年国勢調査に切替えられたことに伴い、労働力調査でも2012年1月分から新基準への切替えが行われた。ベンチマーク人口の基準切替え自体は5年に1度発生することだが、今回はその影響がかなり大きくなっていることに注意が必要である。
労働力調査の結果は季節調整値を除いて一度公表されたものは原則として改定されないことになっている。しかし、労働力調査が雇用政策を判断する上で極めて重要な統計であることや、ユーザーの利便性などを考えれば、断層のない時系列データを正式な公表値として残すことが重要と考えられる。全ての系列について正式な公表値を過去に遡って改定することを検討すべきではないだろうか。
厚生労働省が3月2日に公表した一般職業紹介状況によると、12年1月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント上昇し0.73倍となった。有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の1.20倍と上昇となった。
労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は東日本大震災後も悪化が見られなかったが、ここにきて改善傾向が一段と鮮明となっている。ただし、被災地域の求人増が必ずしも実際の就職に結びつかないという地域間のミスマッチの問題は残存している。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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