コラム
2012年02月22日

なんでこの年になって・・・

保険研究部 研究員   村松 容子

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「なんでこの年になって、毎年身長を計られなくてはいけないのだろう?」
これは、健康診断後に会社の先輩がつぶやいた一言である。

ごもっともだ。体重ならばともかく、身長は1年間で大きく変動しない。体重の変化は病気の予兆かもしれないが、身長の変化は病気の予兆になるとは聞かない。先輩たちとの話の中では、BMI(ボディ・マス指数)を計算するためだけだろう、という結論に落ち着いた。

BMIとは、体重(Kg)/[身長(m)]2で計算することができ、肥満度をあらわす指数として使用される。WHOによって18.5未満で「やせ」、18.5以上25未満で「標準」、 25以上30未満で「過体重」、30以上で「肥満」と判定することとされ、国際比較することができる。OECD諸国で比較すると日本の「肥満」の割合は韓国とともに最も低い
BMIについては、疾病罹患率や死亡率との関係で研究が行われてきている。肥満や肥満によって引き起こされる疾病が深刻な国々では、いかにBMIを減らすかが大きな課題となっている。

ところで、日本のBMIの推移にはユニークな点がある。
1980年から10年おきに見ると、男女でまったく違う推移をしているのだ。男性はすべての年齢階級でBMIが25以上(WHOの基準で「過体重」、日本の基準で「肥満」)の割合が増加しており、2010年調査の20歳代を除いて18.5未満(WHOの基準でも日本の基準でも「やせ」)の割合が減少している。一方、女性では、BMIが25以上の割合が40~60歳代を中心に減少している。18.5未満の割合は若年を中心に増加しており、20歳代女性の2割以上が「やせ」に分類されるという状況だ(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。

同じ調査で、若年女性においては、「自分がやせている」と思う割合が、BMIでの「やせ」の割合を下回っている。こういったことから、若年女性では、やせている事実を認識していない傾向があることもしばしば指摘されている。また、アジア諸国では、先に紹介した欧米の事情とは異なり、やせている方が死亡リスクが高いという研究も行われている。日本においても「少し太っているぐらいが長生きする」等とも言われているぐらいで、やせも課題となっているようだ。

個人が太った、あるいは痩せたことを認識するためなら体重の変動だけで充分だろうし、太りすぎを知るなら腹囲を計るので充分だろう。病気の予兆ならば血液検査の方が説得力を持つかもしれない。だが、日本全体の健康や肥満、および体型に対する考え方を知る上では、比較的簡単に計測できるBMIは有益な情報なのだろう。そういうことなら、毎年身長を計ることへの違和感もなくなってくる。


 
現在、日本肥満学会ではBMIが25.0以上を「肥満」としている。
“Health at a Glance 2011”参照。WHOの基準による「肥満」の割合は、アメリカが3割強、イギリスが2割強、韓国と日本は3%程度(調査年は国により異なる)。
国立がん研究センター「アジア人におけるBMIと死亡リスクの関連」など

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保険研究部   研究員

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
共済計理人・コンサルティング業務、生保市場調査

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