コラム
2012年02月14日

すきです消費税!

保険研究部 常務取締役 部長   中村 昭

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その昔、租税論の授業の冒頭で、租税原則のひとつとしての公平性に関する講義を受けました。垂直的公平については、累進税負担の累進性のバランスについて論議のわかれる所でしょうが、水平的公平については、経済力の等しい人が等しい税負担を負うことは至極当然であり、何故わざわざ租税原則とまで銘打つ必要があるのかと思っていました。
   しかし、実社会で働くようになり、水平的公平の保たれていない現状を経験するにつけ、この原則の重要性を身にしみて理解できるようになりました。

初めて、水平的公平の矛盾を大きく実感したのは、家族旅行で出かけた観光地の海鮮料理店においてでした。我が家は、親子4人で、いつもより少し豪華なメニューの昼食をとりました。お隣も家族連れでしたが、こちらは三世代ご一緒の10人近い大人数で、豪華な船盛り付きの食事を賑やかに楽しまれていました。食事が終わり、支払いの時に出口のレジで一緒になると、お隣の方は大声で領収書を請求されました。「宛名は上様で、日付は空けといてね!」
   我が子は、領収書が珍しいのか、「どうして、パパはリョウシュウショもらわないの?」と尋ねてきますが、「うちは給与所得者だから...」などと説明しだすのも面倒で、返答に難儀しました。おそらく、お隣の方は、私用飲食費を必要経費に計上して事業所得の減少を図るために、領収書を請求されたのでしょう。豪華な船盛りへのうらみは恐ろしいもので、いまでもはっきりとその光景を覚えています。
   源泉徴収により所得を完全に捕捉されている給与所得者に比べて、必要経費支出の認められる人々の事業所得捕捉は困難であり、昔から、『クロヨン(9:6:4)』とか、『トウゴウサン(10:5:3)』と捕捉比率の格差が指摘されてきました。そして、ある支出が私用であるか必要経費であるかの正当な申告は、事業所得者の善意によってのみしか成しえないため、残念ながら、この言葉は今でも現役のままです。今後、納税者番号等の導入があっても、所得が申告でなされる以上、この格差の抜本的解消は見込めず、所得税課税における水平的公平の確立は困難なままでしょう。

一方、消費税は完全に水平的公平が保たれています。同じ金額の消費なら、払う消費税も同額です。さらに、500円ランチの消費税は25円ですが、豪華な船盛り5000円を食べると250円も消費税を支払うわけであり、贅沢をすればたくさん税金を支払うのは、垂直的公平にもある程度かなっていると思います。
   貯蓄の余裕の無い低所得者は、所得のほとんどが消費にあてられるので、消費税負担がより過酷であるという意見があります。しかしながら、平成22年家計調査の年間収入五分位階級別家計収支結果(勤労者世帯)をみても、年収849万円以上の最上位世帯は、年収354万円未満の最下位世帯に比べて、平均可処分所得は3.08倍となっていますが、平均消費支出も2.59倍に増加していて、所得の増加の大部分は消費に支出されていることがわかります。さらに、お金はただの紙ですから、最終的には商品やサービスの購入に使われますので、貯蓄は消費の繰り延べに過ぎず、誰でも最終的には等しく消費税課税されるわけです。

垂直的公平に最も適しているはずの所得税が、現実には徴収場面で水平的公平が保たれていないままであるならば、完全な水平的公平の保たれている消費税で徴収し、税の分配場面で垂直的公平を実現できうる施策を実施すればよいのではないでしょうか。
   ですから、やはり私はこう主張します。「すきです消費税!」

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保険研究部   常務取締役 部長

中村 昭 (なかむら あきら)

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