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- 中国の構造転換と人民元-人民元の行方を左右する「1つの戦略と3つの戦術」
・近年の対米国ドル人民元の推移をみると、一時停止を含むスピード調整はあったものの、大きく下落することなく約3割上昇した。中国が人民元の上昇を許容する背景には国際協調を重視した面もあるが、国益を疎かにしてまで人民元の上昇を許容するとは思えない。そこで人民元(基準値)決定に至る中国の意思決定プロセスを探ってみた。
・購買力平価を基準に人民元を評価すると約4割の割安となる。他方、経済発展度の高い国の通貨は割高で、低い国の通貨は割安という傾向を勘案して、経済発展度との相対で割高割安をみると、現在の人民元はやや「相対割高」と考えられる。そして、人民元は「相対割安」な時には上昇、「相対割高」な時には上昇を停止する傾向がある。
・また、人民元は金融引締め局面では上昇、そうでない時は上昇を停止する傾向もある。この背景には、金融引締め局面では、輸入物価抑制効果が期待できる人民元の切り上げが、インフレ抑制という中国の国益と合致することがあると思われる。
・一方、世界第2位の「経済大国」となった中国は「経済強国」への構造転換も進めている。人民元の切り上げにはマイナス面も多いが、「経済強国」になるには欠かせない技術革新のカタリスト(触媒)となり、構造転換を促すというプラス面もある。
・以上を整理すると、人民元(基準値)決定に至る中国の意思決定プロセスは、構造転換を促すために上昇を許容するという長期戦略を持ちつつも、(1)相対割高割安度、(2)インフレの状況、(3)政治・市場の状況の3つの観点から戦術的な調整を加えるという、いわば「1つの戦略と3つの戦術」で構成される枠組みに整理できると思われる。
三尾 幸吉郎
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