コラム
2012年01月06日

右肩上がりの予想を信じるな

金融研究部 年金総合リサーチセンター 年金研究部長   德島 勝幸

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新しい年を迎えて、今年の景気や株価・金利等の様々な予想が語られている。例えば、「足元の景気は暫時低迷するが、その後米国の景気回復に伴い、日本経済も緩やかな回復を見せる」とか、「過度な円高が一服となることによって、株価は下期にかけて大きく上昇する」といった類のものである。更には、株式市場では「過去を見ても辰年は、昇り竜のように株価上昇率が大きい年であり、今年も大きな株価上昇を期待する」といった妄言に近い見通しまで聞こえる。これまでを振り返ってみるが良い。亥年なら猪突猛進で株価上昇だとか、卯年なら相場が跳ねるだとか、年初の株価見通しは顕著に後で上昇するとしがちなのである。

将来が明るくなると信じたいのは、人間誰しものことであろう。今より先が明るいと信じるからこそ頑張れるということは否定できない。行動ファイナンス的に考えても、見通しに上方バイアスが含まれるのは、ある程度やむを得ない。しかし、個々人が思うことと、市場や相場の予想についてある程度責任を有する立場の人間が発言するものでは、重みが異なるのではなかろうか。単なる期待に基づいて、先行きについて明るい予想を描いていないかどうかを、改めて検証してみる必要があるのではないか。

先行きを見通すのに必要なものは、日本の景気が先行き回復するのかどうか、そして、そのことが株価や金利・為替等の商品にどう影響するか、また、それ以外の要素が相場にどう影響するかを判断することであり、その中には、市場参加者の需給関係も大きな要素として含まれるだろう。もちろん将来に関して予測を置き切れない、先行き不透明な事象は必ず存在する。それらに対して仮定を置いておくか、もしくは、この要素を織り込んでいないと表明するかのどちらかが真摯な見通しであろう。例えば、今年の政局に関して、いつ衆議院の解散総選挙があると見込み、その結果を踏まえて税制・財政政策にどのような影響が出るかを見込むのは、年初時点では、甚だ困難であろう。

投資の基本は、安く買って高く売ることである。空売りやデリバティブ商品を使って、高く売って安く買い戻すことも不可能ではないが、取引コストや種々の制約を考えると、経験を積んだ投資家でなければ、あまりお勧めできない。安く買って高く売るという投資手法を前提に考えると、右肩上がりの相場上昇期待は、一般的に投資を誘引しがちな見通しなのである。果たして2012年の市場環境が、そういった右肩上がりの見方に馴染むのか熟考すべきではないか。しかも、複数の投資対象がすべて価格上昇するといった非現実的な見通しになっていないか、年初の今こそ真摯に考えておきたい。

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德島 勝幸 (とくしま かつゆき)

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年金・債券・クレジット・ALM

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