2011年12月28日

鉱工業生産11年11月~タイの洪水の影響で生産計画から大きく下振れ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・タイの洪水の影響で11月の生産は予想を大幅に下回る
・当面は横ばい圏の動きが続く見込み

■introduction

経済産業省が12月28日に公表した鉱工業指数によると、11月の鉱工業生産指数は前月比▲2.6%と2ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:▲0.7%、当社予想は同▲1.6%)を大きく下回った。出荷指数は前月比▲1.5%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲0.8%と2ヵ月ぶりの低下となった。
11月の生産を業種別に見ると、タイの洪水による影響を強く受けた輸送機械(前月比▲9.5%)、情報通信機械(前月比▲23.7%)の落ち込み幅が極めて大きく、この2業種だけで11月の生産全体の落ち込みを説明できる。
輸送機械は先月発表された予測調査(調査時点は11/10)では前月比0.1%とほぼ横ばいの計画だったが、実績値はこれを大きく下振れた(実現率▲11.0%)。筆者は先月の結果をもとに自動車に関してはタイの洪水による影響が限定的と判断していたが、この見方は楽観的すぎた。
また、情報通信機械は先月の予測調査でも前月比▲14.1%の大幅減産が見込まれていたが、実績値はこれをさらに大きく下回った(実現率▲10.4%)。情報通信機械の下振れは、タイの洪水による部品不足に、地上デジタル放送移行前の駆け込み需要の反動から液晶テレビの国内販売が大きく落ち込んでいることが重なったことによるものと考えられる。
輸送機械、情報通信機械以外の業種についてはまだら模様となっており、タイの洪水の影響を強く受けた2業種以外については一定の底堅さを維持している。
速報段階で公表される16業種中、8業種が前月比で上昇、8業種が低下となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は7-9月期の前期比▲0.1%の後、10月が前月比3.5%、11月が同0.9%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷は7-9月期の前期比▲2.4%の後、10月が前月比1.0%、11月が同3.0%となった。7-9月期のGDP統計の設備投資は1次速報では前期比1.1%と4四半期ぶりの増加となっていたが、2次速報では前期比▲0.4%へと下方修正された。現時点では、10-12月期の設備投資は復旧投資を主因として5四半期ぶりに増加に転じると予想しているが、海外経済の減速を背景とした輸出の低迷によって企業収益が下振れしているため、設備投資の伸びは当面は緩やかなものにとどまる可能性が高い。
7-9月期に前期比13.9%の高い伸びとなった消費財出荷指数は10月の前月比2.5%の後、11月は同▲7.2%となった。特に耐久消費財が前月比▲11.6%と急速に落ち込んだ。GDP統計の個人消費は7-9月期には前期比0.7%と比較的高い伸びとなったが、10-12月期は小幅なマイナスになると予想している。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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