コラム
2011年12月27日

AKB48からJKT48

研究員   高山 武士

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今年の紅白歌合戦で4回目の出場を果たすAKB48は「会いに行けるアイドル」というコンセプトで発足したアイドルグループである。学生など若者の間で知名度が高いことはもちろん、かなり幅広い年齢層にも知られているように思う。
   AKB48は発足当初、一般の人たちにはほとんど知られておらず、本拠地(秋葉原)でファンを相手に専用劇場で公演を繰り返し行うことが中心だった。今でこそ知名度は高まり、様々なメディアで取り上げられているAKB48ではあるが、やはり根強い応援層は、本拠地で彼女たちの活躍を応援し、成長を共有してきたコアなファンだろう。コアなファンはAKB48の歌だけでなく「会うこと、応援すること」に付加価値を見出しており、CDに付属している握手券や人気投票の投票権は、そうしたニーズに応えるものとなっている。

実は現在、様々な都市でAKB48のような「会いに行けるアイドル」が活動している。名古屋の栄、大阪の難波、九州の福岡にはすでに姉妹ユニットがいる(それぞれ、SKE48、NMB48、HKT48という)。さながら「ご当地アイドル」のようになっており、それぞれの地区でコアなファンを有しているという点では、サッカーのクラブチームとホームタウン(本拠地)の関係に近いと言えるのかもしれない。

このように活動拠点を広げてきた「AKB48」だが、最近JKT48というチームが発足したらしい。近いうちにTPE48というチームも発足するようだ。JKT48はジャカルタ(インドネシア)、TPE48は台北(台湾)といずれも日本国外が拠点である。もちろん、現地の人たちでグループは構成される。TPE48はまだメンバーが決定していないとのことだが、JKT48はすでに現地で活動をはじめている。。

これまで、日本のアイドルの新興国進出には、いくつか難しい点があった。国が違えば、宗教や習慣など文化が異なる。また、インドネシアは一人当たりGDPが約3000ドルと、日本の14分の1で、エンタメ産業の市場としては未知数だ。通常であれば、先進国のアイドルが、所得水準の低い新興国で公演して儲けられるかという点で悩ましく、なかなか進出しにくい。
   加えて、アジア新興国における日本製の娯楽、とりわけドラマやアーティストには「韓流」という強力なライバルがいる。多くの韓流ドラマがアジアで放映され、アーティストが公演を行っている。エンタメ市場としては未知数でも、耐久消費財は売れ出しており、韓国は国のブランド力向上と、自国製品の販売促進を目的として、ドラマやアーティストの進出を政府が積極的に支援している。エンタメ産業の輸出を「モノを売る手段」として捉え、国主導で「韓流」を宣伝してきた韓国は強い。

しかし、JKT48はこうした困難を克服する可能性を持っている。JKT48がジャカルタ版「AKB48」とすれば、彼女たちはアイドルありきでそれを新興国に派遣する「供給型アイドル」ではなく、現地ファンのニーズありきの「需要型アイドル」だ。グループのメンバーは、現地の人たちで構成されており、その意味において国の違いは無い。JKT48は「会いに行けるアイドル」として、本拠地(ジャカルタ)で、応援してくれる人たちのニーズを見つつ、変化しながら活動を行い、ファンを定着させていける。コアなファンが根付けば、AKB48のように成功するチャンスもある。現在のところ、JKT48のオーディションには現地から1000人以上の応募があったと言われ、少なくともインドネシアにはアイドルに興味を示す若者が多いようだ。もちろん、今後、JKT48が人気を博すかについては不透明な部分も多いが、それだけに今後の動向が気になるところである。
   JKT48はジャカルタ生まれだが、コンセプトは日本生まれである。JKT48が人気になっても、直接日本の好感度が上がるわけではないが、JKT48という「需要型アイドル」を通じて「日本に対する興味」が喚起されるかもしれない。インドネシアのファンが本家AKB48に興味を抱き、そしてまた、日本の文化やモノに興味を持てば、「JKT48への需要」が「日本への需要」へと拡大する可能性もあるだろう。

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研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
米国経済

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