2011年12月26日

2012年に“都ニハヤル物”

保険研究部 常務取締役 部長   中村 昭

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時は今からおよそ700年前、建武元年(1334年)8月、後醍醐天皇による建武の新政の幕開けの翌年、京都二条河原に詠み人知らずの風刺が効いた落書が掲げられた。『此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 謀綸旨(にせりんじ=偽の天皇の命令文書)、召人(めしうど=貴人の愛人)早馬 虚騒動(そらさわぎ)……』と、以下七五調あるいは八五調の長い長い落書が続く。鎌倉幕府滅亡による政権交代後の混乱した世情を憂えているのだが、何やら現代の政権交代後の世の中にも、そのままあてはまりそうな記述も多く、時は変われども人は変わらずの感を強くする。
さて、はやりすたりは世の常であるし、来年のことを言うと鬼が笑うともいうが、2012年の日本を占えば、100%確実にハヤル物がひとつある。それは、より一層の社会の高齢化の進展である。
社会の高齢化を測る指標としては、高齢化率(総人口に対する65歳以上人口の比率)を用いる。高齢化率7%~14%が『高齢化社会』、同14%~が『高齢社会』と分類され、さらに、同21%~を『超高齢社会』と細分類する場合もある。
ニッセイ基礎研究所は、日本が『高齢社会』にあった(2000年の高齢化率は17.4%)2001年に、社会の高齢化がもたらす諸問題の把握と解決に資するべく、ジェロントロジーフォーラムを所内に設置し、以来、調査・研究を重ねてきた。その間も、日本は高齢化の道を歩み続け、2007年に、世界で初めて『超高齢社会』への到達を遂げた。2010年には高齢化率は23.1%に達し、直近10年間の増加は約6ptにも及んだ。更に同ペースの増加は続き、2020年には29.2%にも達する見通しである(社人研:中位推計)。まさに、10年一昔の社会構造の激変が、今後も継続していくわけである。
ただ、長寿国日本においては、65歳以上でも元気に活躍されている人が多いので、日本の高齢化の指標としては、75歳以上人口の比率で捉えるべきであるとの考えもある。しかしながら、75歳以上高齢化率を調べてみても、2000年には7.1%と既に『高齢化社会』に到達していたし、直近の2010年時点では11.2%まで増加している。更に『高齢社会』には2017年に到達し、『超高齢社会』にも2040年には到達する見通しである(社人研:中位推計)。つまり、どのような捉え方をしても、日本では、今後数十年間は、社会の高齢化が急速に進展し続けていくことが予測できよう。
未来にそなえることは困難だと言われる。それは、未来が不確実であるからだ。しかしながら、社会の高齢化の問題については、その未来像が確実に予見できるわけであり、当問題への対処を進めないことは、困難を理由とはできず、怠惰といわざるを得ないであろう。
年頭にあたり、当研究所がいち早く取り組んできたジェロントロジー研究を、今後更に推進させていくことを決意したい。

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