2011年11月07日

現役世代と比較して高齢者世代の株式配分はどうして高いのか?

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   北村 智紀

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■見出し

1――はじめに
2――ライフサイクル・モデルによる世代間の株式配分の比較
3――高齢者世代と現役世代との投資パラメータの違い
4――結論と今後の課題

■introduction

家計が金融資産を保有する理由は、病気や失業などの万が一への備え、老後の(将来の)生活費の準備、住宅購入や子供の教育費の準備、流動性の確保などの様々なものが考えられる。このなかで、老後の(既に退職している場合は将来の)生活費の準備など長期的な目的で保有する金融資産では、リスクは大きいが高いリターンが期待できる株式(株式投資信託も含めて考える)に投資されることがある。
最もシンプルな仮定をおくファイナンス理論では、株式に期待できるリターンが国債などの安全資産の利回りを超える限り、全ての家計が(ごく少額であったとしても)株式を保有すべきであり、また、株式への資産配分(以下、「株式配分」とする)は、家計の年齢に関わらず一定量を保つべきだとしている。
一方、実務の世界では、労働収入の限られる高齢者世代は、労働収入を得て生計を立てている現役世代よりも、株式配分を少なくすべきというアドバイスが行われる。例えば、勤務先の企業が掛金を拠出し、従業員(加入者)が資産運用を行う確定拠出年金では、ライフサイクルに基づく運用商品の選択が提案されることがある。これは、年齢が若い加入者には、運用期間が長いので株式投信などを積極的に組入れるのに対して、退職が近い従業員には比較的安全な運用を薦めるものである。あるいは、ライフサイクル・ファンドといって、運用会社が株式と債券への資産配分を自動的に調整するタイプのファンドが導入されつつある。このファンドは、加入者の年齢が低いうちは債券より株式への配分を高め、年齢が高まるにつれ株式への配分を減らす運用が行われる。また、退職後の従業員(受給者)に対しては、リスクが低い運用商品が多く提示される傾向がある。
これに対して、現実の家計の株式配分は異なる傾向を示している。家計の全金融資産に占める株式と投資信託の割合は、30~40歳代では約8%、50歳代では約10%であるが、60~70歳以上では約13%であり、高齢者世代の方が高まっている(金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(平成22年))。
そこで本稿は、高齢者世代の株式配分が現役世代よりも高まる要因を分析する。本稿の構成は以下のとおりである。まず、第2節で家計が生涯にわたってどのような投資をすべきか理論的に説明するライフサイクル・モデルを利用して、高齢者世代が現役世代と比較して相対的に株式配分が高まる要因を概観した後、第3節では、高齢者世代と現役世代の株式配分について、実際のデータを利用して検証する。第4節は結論と今後の課題である。

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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

北村 智紀 (きたむら ともき)

研究・専門分野
年金運用・リスク管理、公的年金

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