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- どこまでバランスを取り続けるのか~多床室からも居住費負担?:介護保険~
コラム
2011年11月01日
6月の介護保険改正法の成立を受け、2012年4月からの介護保険制度改正の大枠は固まったと思われた。しかし、法改正時点で積み残しまたは先送りとなった論点について、その後の「税と社会保障の一体改革」の流れに乗るかたちで、制度改正前の“滑り込み”の議論が行われている。
主な論点は、(1)「利用者負担の引上げ」(介護サービス利用者の1割の定率自己負担)、(2)介護納付金(第2号被保険者保険料)への「総報酬割の導入」、(3)施設の多床室入所者への「居住費(室料)負担の導入」などである。
もともと、“後付け”の一体改革であったのだから、消費税率引上げの方がうやむやになっても“社会保障の改革だけ”行われることに誰も何も言わないのは、今風に言えば「想定の範囲内」なのだろうか。もう一つ、形式面について言えば、「利用者負担引上げの方向で検討」といった第一報が、何故“日曜日”なのか(10月30日は日曜日)。翌月曜日に審議会が行われることを割り引いても、望ましいタイミングとは言えないだろう。このような状況では重要な論点が真摯に議論されているのか不安になる。
さて、本稿の着目点は、ここではなく、前述の論点の(3)、「多床室入所者の居住費負担」である。
この議論にあたって、介護保険サービスの中の在宅サービス・施設サービス(居住系サービス含む)のあり方や、提供される介護サービスの内容や質・量、そしてその評価(給付費の水準)が、根っこからキチンと議論されているのであるならば、あまり心配はしない。しかし、真っ先に挙げられた理由は“個室入所者の負担とのバランス”である。
長年放置されている“ズレ”であれば、それを是正することは必要ではある。ただ、今回引き合いに出された個室入所者の居住費負担は、つい数年前、在宅サービス利用者の負担とのバランスを理由に導入されたばかりである。それを天秤の片方に乗せ、また“バランス”を理由に多床室入所者に居住費負担を求めることは、少々安易なのではないだろうか。
当時の、“在宅との居住環境に近い「個室」を利用する入所者には相応の居住費の負担を求める”という説明には説得力があった。しかし、今回(の社会保障審議会資料を見る限り)は、多床室と個室という異なる居住環境や一定の制約を受けざるを得ないケアの内容については何らのデータ提示もなく、経済的な負担の『バランス』感だけを強調する説明に説得力はないだろう。
今後、天秤の片方には、介護保険制度内だけでなく、医療保険制度の仕組みや考え方が乗せられる可能性も十分にある。介護と医療には、「被保険者の年齢要件(後期高齢者医療75歳、介護65歳)」、「状態に応じた給付上限の仕組み(要介護度別の支給限度額の話)」、「自費利用と保険給付(混合診療の話)」など、“バランス”が取れていないものはたくさんある。
介護報酬改定、診療報酬との同時改定に気を取られてしまう時期ではあるが、“滑り込み”の議論にも注目する必要がある。
主な論点は、(1)「利用者負担の引上げ」(介護サービス利用者の1割の定率自己負担)、(2)介護納付金(第2号被保険者保険料)への「総報酬割の導入」、(3)施設の多床室入所者への「居住費(室料)負担の導入」などである。
もともと、“後付け”の一体改革であったのだから、消費税率引上げの方がうやむやになっても“社会保障の改革だけ”行われることに誰も何も言わないのは、今風に言えば「想定の範囲内」なのだろうか。もう一つ、形式面について言えば、「利用者負担引上げの方向で検討」といった第一報が、何故“日曜日”なのか(10月30日は日曜日)。翌月曜日に審議会が行われることを割り引いても、望ましいタイミングとは言えないだろう。このような状況では重要な論点が真摯に議論されているのか不安になる。
さて、本稿の着目点は、ここではなく、前述の論点の(3)、「多床室入所者の居住費負担」である。
この議論にあたって、介護保険サービスの中の在宅サービス・施設サービス(居住系サービス含む)のあり方や、提供される介護サービスの内容や質・量、そしてその評価(給付費の水準)が、根っこからキチンと議論されているのであるならば、あまり心配はしない。しかし、真っ先に挙げられた理由は“個室入所者の負担とのバランス”である。
長年放置されている“ズレ”であれば、それを是正することは必要ではある。ただ、今回引き合いに出された個室入所者の居住費負担は、つい数年前、在宅サービス利用者の負担とのバランスを理由に導入されたばかりである。それを天秤の片方に乗せ、また“バランス”を理由に多床室入所者に居住費負担を求めることは、少々安易なのではないだろうか。
当時の、“在宅との居住環境に近い「個室」を利用する入所者には相応の居住費の負担を求める”という説明には説得力があった。しかし、今回(の社会保障審議会資料を見る限り)は、多床室と個室という異なる居住環境や一定の制約を受けざるを得ないケアの内容については何らのデータ提示もなく、経済的な負担の『バランス』感だけを強調する説明に説得力はないだろう。
今後、天秤の片方には、介護保険制度内だけでなく、医療保険制度の仕組みや考え方が乗せられる可能性も十分にある。介護と医療には、「被保険者の年齢要件(後期高齢者医療75歳、介護65歳)」、「状態に応じた給付上限の仕組み(要介護度別の支給限度額の話)」、「自費利用と保険給付(混合診療の話)」など、“バランス”が取れていないものはたくさんある。
介護報酬改定、診療報酬との同時改定に気を取られてしまう時期ではあるが、“滑り込み”の議論にも注目する必要がある。
阿部 崇
研究・専門分野
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