2011年10月28日

鉱工業生産11年9月~7-9月期は大幅増産も、10-12月期はほぼ横ばいへ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・7-9月期の生産は前期比4.1%
・10-12月期の急減速は不可避

■introduction

経済産業省が10月28日に公表した鉱工業指数によると、9月の鉱工業生産指数は前月比▲4.0%と6ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.0%、当社予想は同▲3.1%)を大きく下回った。出荷指数は前月比▲2.6%と5ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.0%の横ばいとなった。
9月の生産を業種別に見ると、震災後の落ち込みから急回復を続けてきた輸送機械が前月比▲6.0%と5ヵ月ぶりに低下したほか、地上デジタル放送移行前の駆け込み需要の反動減から液晶テレビなどの情報通信機械が8月の前月比▲10.6%に続き、9月も同▲8.2%と大きく落ち込んだ。速報段階で公表される16業種の全てが前月比で低下した。
7-9月期の生産は前期比4.1%と5四半期ぶりに上昇した。ただし、6月までの急回復により発射台が高かったことによる影響が大きく、実勢としては夏場以降、減速局面に入っている。9月の生産が大きく落ち込んだことで、10-12月期は7-9月期とは逆に低い発射台からスタートすることになる。7-9月期の生産を業種別に見ると、サプライチェーンの復旧に伴う大幅増産から輸送機械が前期比32.2%のV字回復を記録し、7-9月期の生産増加のほとんどが輸送機械の寄与によるものとなった。一方、世界的なIT関連財の在庫調整の影響から電子部品・デバイスは前期比▲0.3%と低迷が続いた。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は4-6月期の前期比6.1%の後、7-9月期は前期比▲0.2%と2四半期ぶりに低下した。また、建設投資の一致指標である建設財出荷は4-6月期の前期比0.2%の後、7-9月期は同▲2.4%となった。
一方、7-9月期の消費財出荷指数は前期比13.4%(4-6月期:前期比▲6.6%)の高い伸びとなった。非耐久消費財は前期比▲0.6%と小幅な低下となったが、自動車、薄型テレビなどの耐久消費財が前期比29.6%と極めて高い伸びとなった。
ただし、消費財出荷指数の動きを月次ベースで見ると、8月が前月比▲3.6%、9月が同▲3.8%とここにきて急速に落ち込んでいる。GDP統計の個人消費は7-9月期には前期比で明確なプラスとなる可能性が高いが、10-12月期は再び減少に転じる恐れがあるだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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