コラム
2011年10月28日

暴力団排除条項について

小林 雅史

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2007年6月19日、犯罪対策閣僚会議幹事会申合せとして「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が取りまとめられ、反社会的勢力との関係遮断の観点から、反社会的勢力が取引先や株主となって、不当要求を行う場合の被害を防止するため、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入することが示された。

具体的には、契約書や取引約款の中に、

(1)暴力団を始めとする反社会的勢力が、当該取引の相手方となることを拒絶する旨

(2)当該取引が開始された後に、相手方が暴力団を始めとする反社会的勢力であると判明した場合や相手方が不当要求を行った場合に、契約を解除してその相手方を取引から排除できる旨

を盛り込んでおくことが有効であるとされた。

この指針に関する解説においては、指針は、反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応を定めたものであり、法的拘束力はないとされているが、契約書や取引約款に暴力団排除条項を盛り込むことが望ましいとされ、契約締結の時点では「契約自由の原則」により、暴力団との契約を拒絶し、契約後も、暴力団排除条項の導入により、契約締結時に「自分は暴力団関係者ではない」と虚偽の申告をしたり、不当・違法な行為を行った場合などには、「信頼関係破壊の法理」により契約を解除することができるとされた。

指針を受け、都道府県など地方自治体においても「暴力団排除条例」の整備が相次ぎ、2011年7月までに全都道府県が制定、10月の東京都と沖縄県での施行により、全都道府県での施行が実現した。

暴力団排除条例の内容は、各都道府県により区々であるが、たとえば東京都の暴力団排除条例においては、一定の区域内での暴力団事務所の開設や、事業者の暴力団への利益供与などの禁止規定(違反した場合は罰則など)が定められているほか、努力義務規定として、事業者の契約時における措置として、契約時に相手方が暴力団関係者でないことを確認し、契約後に暴力団関係者と判明した場合、催告なく契約を解除できる旨の特約(暴力団排除条項)を定めるよう努めることが求められている例もある。

こうした動向を踏まえ、金融機関の取引における暴力団排除も進み、たとえば全国銀行協会では2008年11月に融資取引、2009年9月に普通預金取引・当座勘定取引などについて、暴力団排除条項や暴力団関係者でないことを表明・確認させる口座開設申込書などの参考例を会員銀行に通知しており、こうした暴力団排除条項により、加入時に暴力団員ではない旨の虚偽の申告をして開設した普通預金口座が解約された例もすでに発生しているとのことである。

最近の新聞報道によれば、生命保険業界や損害保険業界においても、暴力団排除条項の導入を検討中とのことであり、今後の動向等について引き続き注視していきたい。
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