2011年09月30日

鉱工業生産11年8月~生産は減速局面へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・生産は5ヵ月連続の上昇
・鉱工業生産は減速局面へ

■introduction

経済産業省が9月30日に公表した鉱工業指数によると、8月の鉱工業生産指数は前月比0.8%と5ヵ月連続で上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.5%、当社予想は同1.2%)は下回った。出荷指数は前月比0.3%と4ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比2.1%と2ヵ月ぶりの上昇となった。
8月の生産を業種別に見ると、輸送機械が前月比6.5%の高い伸びとなり、在庫の高止まりが続く電子部品・デバイスも前月比1.2%と2ヵ月ぶりに上昇したが、地上デジタル放送移行に伴う液晶テレビの大幅減産を主因として情報通信機械が前月比▲10.8%と大きく落ち込み、生産全体の足を引っ張った。速報段階で公表される16業種中、11業種が前月比で上昇、4業種が低下(1業種が横ばい)となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は前月比▲3.5%(7月:同0.6%)となったが、7月、8月の平均は4-6月期よりも2.2%高い水準となっている。4-6月期のGDP2次速報では設備投資の伸びが1次速報の前期比0.2%から同▲0.9%へと下方修正され、3四半期連続のマイナスとなったが、毀損した生産設備の復旧を背景に7-9月期は増加に転じる可能性が高いだろう。
消費財出荷指数は前月比▲2.6%(7月:同3.0%)と4ヵ月ぶりに低下した。耐久財(前月比▲2.7%)、非耐久財(同▲3.0%)ともに大きく低下した。消費財出荷指数の7月、8月の平均は4-6月期よりも16.1%も高く、GDP統計の個人消費も7-9月期は4四半期ぶりの増加となる可能性が高いが、地上デジタル放送移行前のテレビの駆け込み需要や節電関連需要といった一時的な要因が大きいため、持続性には疑問が残る。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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