コラム
2011年09月09日

女子でスマホはどう変わる?

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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ますます勢いを増すスマートフォン市場だが、最近はメーカー各社とも『女子』を意識した展開を図っているようだ。黒・白の2色だけでなく、ピンク色もそろえてきたり、小型・軽量をうたうところも増えてきた。携帯電話会社のテレビCMでは「私、片手でいいんです」と、今までのフィーチャー・フォンと同じように、女性が片手でメールを打てる利便性を訴求するものも出てきている。

スマートフォン市場が『女子』に広がることによって、どんな変化が起こるだろうか。端末、アプリ、価格、そして女性のライフスタイルの4つの観点について考察したい。

まず、端末については、スマートフォンならではの液晶画面の大きさのメリットを享受できる範囲で小型化・軽量化が進むだろう。それは冒頭のテレビCMにみられるように、今まで使っていた携帯電話の操作性を想定し、スムースな乗り換えをうながすためだ。また、カラー・バリエーションも増えるだろう。例えば、ピンクと一口に言っても口紅のバリエーションに見られるように女性の好みは千差万別であり、フィーチャー・フォンでは同じモデルについて濃淡複数色のピンクをそろえているメーカーもある。また、タッチパネルの感応性も、さらに求められるかもしれない。携帯電話のタッチパネルには主に感圧式と静電式が用いられているが、前者は押した時の圧力、後者は人が持つ微弱電流に反応する。静電式は爪には反応しないため、女性で長いネイルをしていると操作に少し工夫がいるのだ。一方で、感圧式はマルチ・タッチができないというデメリットもある。いずれにしろ女子に利用を広げるためには、長い爪を考慮した操作性も課題になるだろう。

次に、アプリだが、占いやダイエットといった女性向けのアプリについては従来のケータイ向けコンテンツと似通った議論になるため、ここでは触れない。女性だけの問題ではないが、さまざまなアプリをダウンロードし個人のライフスタイルがぎっしり詰まっているスマートフォンにはセキュリティ面の不安を感じるユーザーも多いだろう。調査によると、過半数のユーザーがセキュリティに不安を感じながら、セキュリティ・アプリを利用しているのは3割程度だそうだ(※1)。スマートフォンの利用拡大に伴い、セキュリティ・アプリのニーズは増えていくだろう。

価格面については、女性の方が男性より携帯電話にあてる支出は低いと想定すると、フィーチャー・フォンで見られたような機能を少し落とした低価格帯の端末や通信料プランの工夫も必要になってくる。

最後に女性のライフスタイルの変化だが、物理的にも精神的にも機敏さ、スマートさが増すのではないだろうか。よく女性ファッション誌では読者のバッグの中身紹介などの特集があるのだが、そこでは化粧ポーチや携帯電話のほか、iPodやSuica定期券、手帳、そして案外デジカメも多く登場する。化粧ポーチ以外は全てスマートフォンのアプリで代替してしまうと、物理的に荷物を軽くすることができる。これは荷物が多くてクラッチ・バッグはとてもムリと思っていた女子には好都合ではないだろうか。そして、精神的な面では、意思決定が早くなるのではないかと考える。従来、家のパソコンで行っていたネット・ショッピングやwebメールの確認なども多くの専用アプリが無料で提供されているため、思い立ったら隙間時間に即行動にうつすことができる。

2011年夏はカラーや小型、軽量で女子マーケットに進出してきたスマートフォンだが、次はどんな工夫が考えられているのか、女子としてもとても楽しみである。
 
 
(※1) 株式会社MM総研, “スマートフォンアプリ市場と利用実態(2011年9月)”
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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