2011年08月31日

鉱工業生産11年7月~生産の回復ペースは大きく鈍化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・生産の回復ペースは大きく鈍化
・生産が震災前の水準に戻る前に腰折れの懸念も

■introduction

経済産業省が8月31日に公表した鉱工業指数によると、7月の鉱工業生産指数は前月比0.6%と4ヵ月連続で上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.5%、当社予想は同1.8%)を下回った。出荷指数は前月比0.2%と3ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比▲0.2%と2ヵ月連続の低下となった。
7月の生産を業種別に見ると、情報通信機械が前月比15.7%と3ヵ月連続で10%を超える高い伸びとなったほか、サプライチェーンの復旧に伴い急回復を続ける輸送機械が前月比5.3%と好調を維持した。情報通信機械、輸送機械は直近3ヵ月間でそれぞれ50%、70%を超える極めて高い伸びを記録した。一方、在庫の高止まりが続く電子部品・デバイスは前月比▲3.4%と2ヵ月ぶりに低下した。速報段階で公表される16業種中、8業種が前月比で上昇、7業種が低下(1業種が横ばい)となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は4-6月期に前期比6.1%と2四半期ぶりにプラスとなった後、7月は前月比0.6%となった。GDP統計の設備投資は震災の影響から1-3月期には前期比▲1.4%と6四半期ぶりに減少したものの、4-6月期は同0.2%と小幅ながら増加に転じた。毀損した生産設備の復旧を背景に設備投資は回復基調を維持していると判断される。
一方、消費財出荷指数は4-6月期に前期比▲6.6%(1-3月期:同▲7.8%)と2四半期連続で大幅に落ち込んだ後、7月は同2.7%(耐久財が前月比3.6%、非耐久財が同0.7%)となった。7月の消費財出荷指数は4-6月期の平均を17.3%も上回っている。旅行などのサービス消費は財に比べれば弱い動きを続けているが、10年10-12月期から11年4-6月期まで前期比でマイナスを続けてきたGDP統計の個人消費は、7-9月期は4四半期ぶりの増加となる可能性が高いだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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