2011年07月25日

健保組合制度の危機的状況

米澤 慶一

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本年4月、健康保険組合連合会により2011年度の予算集計が発表された。健保組合全体の赤字幅は前年比1割ほど縮小するものの、それでも6千億円に上る見込みである。しかもこの数字は3月に起きた東日本大震災の影響を織り込んでいない。健保組合制度未曾有の危機と言われる所以である。
大企業雇用者を中心に構成される健保組合は、老人医療費負担の影響で94年には赤字化し、その後2002年には赤字が約4千億円にまで達した。その後被保険者負担の拡大などの手を打ち、2003年から2007年にかけては黒字基調を維持してきたが、2008年以降、後期高齢者(75歳以上)医療への拠出及び国保支援としての前期高齢者(65~74歳)医療への大幅な負担増が響き、赤字に逆戻りしている。
現役世代の負担減を目指して導入された後期高齢者医療制度ではあったが、現状では皮肉な結果となっていると言わざるを得ない。「国保に較べ恵まれ過ぎていた」企業健保に応分の負担を求めたという意見を考慮に入れても、その負担に耐え兼ね、保険料を引き上げたり、それも及ばず解散して政府管掌健保へと移行する組合が後を絶たない現状では、制度としての存続そのものが危ぶまれる。
予算段階での赤字見込みに直面し、各健保組合も、限られた広報費の中で組合員への健康注意喚起を強化したり、症例基準を緩和して定期健診での再検査数を減らすといった、涙ぐましい「工夫」を凝らしているが、不況下のリストラや賃金抑制による収入減と、高齢化・震災による医療費増大という現実の前では、「焼け石に水」といった状況にある。

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