2011年06月29日

鉱工業生産11年5月~夏場の伸び悩みを示唆する生産計画

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・持ち直しに向かう鉱工業生産
・電力不足の影響で夏場の生産は伸び悩みの可能性

■introduction

経済産業省が6月29日に公表した鉱工業指数によると、5月の鉱工業生産指数は前月比5.7%と2ヵ月連続で上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比5.5%、当社予想は同6.2%)通りの結果となった。出荷指数は前月比5.3%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比5.1%と2ヵ月連続の上昇となった。
5月の生産を業種別に見ると、震災前の半分程度まで生産水準が落ち込んでいた輸送機械が、サプライチェーンの復旧に伴い前月比36.4%の急上昇となった。また、一般機械は震災が発生した3月には前月比▲14.5%と大きく落ち込んだが、4月の同12.0%に続き5月も同5.3%の高い伸びとなり、震災前の水準を回復した。一方、在庫の高止まりが続く電子部品・デバイスは前月比▲0.6%と3ヵ月連続で低下した。速報段階で公表される16業種中、11業種が前月比で上昇、5業種が低下となった。
3月の生産は単月では過去最大の落ち込みとなったが、震災に伴う一時的なショックによる部分が大きかった。世界的な需要の急減によって景気の大幅な悪化が続いたリーマン・ショック後とは異なり、生産の急激な落ち込みは短期間で歯止めがかかったことが改めて確認された。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は前月比8.2%(4月:同8.0%)の高い伸びとなり、4月、5月の平均は1-3月期よりも4.2%高い水準となっている。また、建設投資の一致指標である建設財出荷は前月比▲0.7%と若干低下したが(4月:同5.3%)、4月、5月の平均は1-3月期よりも0.1%高い水準となっている。毀損した生産設備の復旧に向けた動きが早くも顕在化しているものと考えられる。GDP統計の設備投資は震災の影響で1-3月期には前期比▲1.3%となったが、4-6月期には増加に転じる可能性もあるだろう。
一方、消費財出荷指数は前月比13.3%(4月:同▲7.3%)の高い伸びとなった。特に、自動車販売の持ち直しを主因として耐久財が前月比30.5%の高い伸びとなった。ただし、3月、4月の落ち込みが非常に大きかったため、4月、5月の平均は1-3月期よりも▲13.1%低い水準となっている。GDP統計の個人消費は10年10-12月期、11年1-3月期に続き前期比でマイナスとなることは避けられないだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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