2011年06月02日

法人企業統計11年1-3月期~企業収益、設備投資は堅調だが、震災の影響が十分に反映されず

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・製造業が6四半期ぶりの減益に
・設備投資は3四半期連続の増加
・1-3月期・GDP2次速報は1次速報とほぼ変わらず

■introduction

財務省が6月2日に公表した法人企業統計によると、11年 1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比16.2%(10-12月期:同27.3%)と6四半期連続の増加となった。5四半期連続の増収増益だが、売上高の伸びが10-12月期の前年比4.1%から同1.4%へと鈍化したことを主因として、増益率は4四半期続けて低下した。非製造業は前年比30.1%(10-12月期:同31.6%)と高い伸びを維持したが、製造業が前年比▲5.3%(10-12月期:同20.0%)と 四半期ぶりの減益となった。
なお、東日本大震災により岩手県、宮城県、福島県などの一部の地域の調査対象法人について、調査を実施することが困難となったため、今回の結果は、調査延期法人、回答延期法人について業種別・資本金階層別の全国平均値を基に補完推計を行い、「速報値」として公表された。1-3月期の回答率(金融業、保険業を除く)は10-12月期の73.7%から67.7%へと大きく低下しているが、通常の期限までに回答ができなかった企業は収益、設備投資などが急激に悪化していることが推測される。今回の結果は実勢よりもかなり高めの結果となっている可能性が高いだろう。財務省は、調査延期法人、回答延期法人の回答を改めて集計した結果を、7/29に「確報値」として公表する予定としている。
季節調整済の経常利益は前期比1.6%(製造業:前期比3.3%、非製造業:同0.7%)と8四半期連続の増加となった。経常利益(季節調整値)の水準は最悪期(09年1-3月期の4.4兆円)にはピーク時(07年1-3月期の16.0兆円)の3割弱(27.6%)まで落ち込んだが、11年1-3月期(13.4兆円)には8割強(83.6%)まで回復している。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.8%となり、前年に比べ0.5 ポイント改善した(10-12月期:前年差0.7ポイント)。製造業が前年差▲0.5ポイント(10-12月期は同0.5ポイント)と6四半期ぶりに悪化したが、非製造業が前年差0.9ポイント(10-12月期は同0.8ポイント)と4四半期連続で改善した。
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は18業種中7業種が減益となった。特に、震災以降、サプライチェーンの寸断などから生産、販売が急減した輸送用機械が前年比▲71.7%と大幅減益となった。非製造業では、卸・小売業は前年比76.3%と伸びを高めたが、運輸業、郵便上は前年比▲41.3%と減益に転じ、電気業は4四半期ぶりに赤字(▲175 億円)に転落した。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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