2011年06月02日

最近の人民元と今後の展開

経済研究部 上席研究員   三尾 幸吉郎

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■introduction

5月の人民元は、米国ドルに対して数日毎に連続上昇と連続下落を繰り返す展開となった(図表-1)。5月9-10日にワシントンで開かれた米中戦略経済対話を前に一旦は6.5の大台を割り込んだ人民元は、その後連続下落となり、対話を円滑に進めるための一時的上昇だったとの思惑を呼んだが、27日に米国財務省が「為替操作国」認定の見送りを発表して以降も、人民元の基準値はじりじりと上昇、米国ドルに対する人民元相場の上昇トレンドは継続している。
他方、1年先渡しのNDF(ノンデリバラブル・フォーワード)の値動きをみると、5月2日に6.3近辺で最高値を付けたあとは反落、6.3511で5月末を終えた(図表-2)。NDFが1年先の人民元相場を予測して動くことを考えれば、今後の人民元高に対する市場期待がやや萎んだ結果といえる。米国ドルに対する為替レートが調整局面にあるのは人民元のNDFだけではない。ユーロやブラジル、ロシア、インドなど新興国通貨も同様である(図表-3)。ユーロ圏では6月14-15日の財務相会合に向けギリシャの追加支援が正念場を迎え、5月初めの原油価格急落でロシア経済にも先行き不透明感が浮上、政策金利を連続的に引き上げたブラジル、インド、中国では景気減速懸念が台頭しており、今回の調整が米国ドル安トレンド終了の予兆である可能性も否定し切れない。
一方、これまでの相場展開を振り返ると(図表-2)、昨年6月19日に中国人民銀行が「人民元為替相場形成メカニズム改革の推進」を発表して以降の約1年で、人民元のNDFは3回の調整局面を経験している。第一回目は咋年7月から8月にかけてで、弾力化開始前の6月7日に付けたボトム(6.78195)から7月2日のピーク(6.6721)まで0.10985上昇した人民元は、その後に約2ヵ月間調整している。第二回目は咋年10月中旬から12月中旬にかけてで、9月1日に付けたボトム(6.7575)から10月15日のピーク(6.4987)まで0.2588上昇した人民元は、その後約2ヵ月間調整しており、今回は第三回目の調整にあたる。図表-3に示した各国通貨の対USドル相場をみると、過去2回の人民元のNDFの調整局面にはユーロや他の新興国通貨もほぼ同時に調整している。調整時期は四半期の中間月(2、5、7、11月)近辺の約2ヵ月で、ヘッジファンドの解約45日前ノーティスの時期を挟むという共通点があることから、一時的な米国ドル需要増が背景にありそうだ。米国では量的緩和策第2弾(QE2)の出口を探り始めたものの、景気指標の下ブレが続き、住宅価格が底割れするリスクも抱えているため、米国ドルへの本格的な資金回帰にはまだ時間的余裕があり、今回の調整は米国ドル安トレンド終了ではなく一時的な米国ドル需要増が主因とみている。

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経済研究部   上席研究員

三尾 幸吉郎 (みお こうきちろう)

研究・専門分野
中国経済

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