2011年05月25日

避けられない製造業の海外生産シフト

  桑畠 滋

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製造業の海外生産シフトが着実に進んでいる。内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」によると、2010年度の製造業の海外現地生産比率(実績見込み)は18.0%と、過去最高となった。
長期的にみても、海外現地生産比率は1995年度の8.1%から緩やかに上昇基調が続いており、製造業はこれまでも着実に海外生産シフトを進めてきたことが確認できる。同調査によると、今後もこの傾向は続き、2015年度には海外現地生産比率は21.4%まで上昇することが見込まれる。業種別では、化学、非鉄金属などの素材型製造業(17.0%)に比べ、電気機器、輸送用機器などの加工型製造業(29.7%)でより海外現地生産比率が高い傾向がある。
海外現地生産比率が上昇を続ける要因として、中国を中心とした新興国を中心に「海外」に対する認識がかつての「安い労働コストを保った先進国向け製品の生産拠点」から、「大消費地」へと徐々に変化してきたことが挙げられる。「生産拠点を海外に置く理由」についての回答結果をみると、「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」が製造業全体の42.9%と、「労働力コストが安い」(26.1%)を上回り、最も高くなっている。業種別では、「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」と回答した割合は素材型製造業で顕著(58.2%)であり、加工型製造業(34.4%)に比べより強く新興国の旺盛な需要の取り込みを意識しているものと推察される。
今後も、新興国の存在感は一際大きくなっていく。IMFの予測によると、新興国GDPの世界シェアは、1995年の12.3%から2010年に22.7%となった後、2015年には27.7%にまで上昇することが見込まれている。人口減少により縮小を続ける国内需要を横目に、新興国では需要の拡大が続くことから製造業の海外生産シフトは確実に進んでいくだろう。加えて、東日本大地震の影響による電力不足の長期化が、国内製造業の生産能力を低下させることも海外生産シフトを加速させる方向に働くだろう。

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