- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 企業経営・産業政策 >
- 避けられない製造業の海外生産シフト
製造業の海外生産シフトが着実に進んでいる。内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」によると、2010年度の製造業の海外現地生産比率(実績見込み)は18.0%と、過去最高となった。
長期的にみても、海外現地生産比率は1995年度の8.1%から緩やかに上昇基調が続いており、製造業はこれまでも着実に海外生産シフトを進めてきたことが確認できる。同調査によると、今後もこの傾向は続き、2015年度には海外現地生産比率は21.4%まで上昇することが見込まれる。業種別では、化学、非鉄金属などの素材型製造業(17.0%)に比べ、電気機器、輸送用機器などの加工型製造業(29.7%)でより海外現地生産比率が高い傾向がある。
海外現地生産比率が上昇を続ける要因として、中国を中心とした新興国を中心に「海外」に対する認識がかつての「安い労働コストを保った先進国向け製品の生産拠点」から、「大消費地」へと徐々に変化してきたことが挙げられる。「生産拠点を海外に置く理由」についての回答結果をみると、「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」が製造業全体の42.9%と、「労働力コストが安い」(26.1%)を上回り、最も高くなっている。業種別では、「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」と回答した割合は素材型製造業で顕著(58.2%)であり、加工型製造業(34.4%)に比べより強く新興国の旺盛な需要の取り込みを意識しているものと推察される。
今後も、新興国の存在感は一際大きくなっていく。IMFの予測によると、新興国GDPの世界シェアは、1995年の12.3%から2010年に22.7%となった後、2015年には27.7%にまで上昇することが見込まれている。人口減少により縮小を続ける国内需要を横目に、新興国では需要の拡大が続くことから製造業の海外生産シフトは確実に進んでいくだろう。加えて、東日本大地震の影響による電力不足の長期化が、国内製造業の生産能力を低下させることも海外生産シフトを加速させる方向に働くだろう。
桑畠 滋
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月19日
しぶといドル高圧力、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ5月号 -
2024年04月19日
年金将来見通しの経済前提は、内閣府3シナリオにゼロ成長を追加-2024年夏に公表される将来見通しへの影響 -
2024年04月19日
パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割 -
2024年04月19日
消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し -
2024年04月19日
ふるさと納税のデフォルト使途-ふるさと納税の使途は誰が選択しているのか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【避けられない製造業の海外生産シフト】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
避けられない製造業の海外生産シフトのレポート Topへ