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未曾有の被害をもたらした東日本大震災の被災者の方々に心からお見舞い申し上げたい。2か月以上が経過した今も、復興への確かな道筋は見えてこない。そんな時に、芸術文化の話をするのは不謹慎と思われる向きもあるだろう。が、そんな時だからこそ、アートの話をしたい。
震災が直撃した東北地方では多くの文化施設が被害を受け、事業の凍結や休館が相次ぐ。地震で傷ついた文化財も少なくない。当然、住宅や病院、学校などの復旧が最優先で、文化施設や文化財に手が回るのは随分先のことだろう。そんな中、アートで何かできないかを模索する動きが広がっている。
毎年アート関係のNPOが全国から集まり、アートによる地域再生や社会的課題への取り組みを話し合ってきた全国アートNPOフォーラム。今年は震災直後の3月18日、鳥取での開催が予定されていた。自粛も検討されたが、テーマを急遽変更。震災を受けて「わたしたちに、できること。アートとNPOに、できること」をテーマに開催された。2日間の議論を経て「被災された人々に寄り添い、希望に満ちた未来を創造する、豊かな文化的実践に取り組んでいく」というステートメントを採択、4月初頭にアートNPOエイドというプログラムを立ち上げた。
(社)企業メセナ協議会も3月下旬に臨時理事会を開催し、被災者・被災地を応援する芸術・文化活動、並びに被災地の有形無形の文化資源を再生する活動への支援を目的に「東日本大震災芸術・文化による復興支援ファンド」を創設し、4月中旬には11件の第1回助成活動を決定した。海外でもアート関係者から支援の動きが続いている。中でも素早い対応だったのが、ニューヨークを拠点に日米の文化交流を促進するNPOジャパン・ソサイエティだ。地震のあった3月11日夕方(米国時間)には「Japan Earthquake Relief Fund」を立ち上げ、わずか1週間で100万ドルを調達。4月4日にはオノ・ヨーコ、坂本龍一、ジョン・ゾーンなどの出演するチャリティ・コンサートも開催され、既に日本の団体に支援金が支給された。
今後もチャリティによる義捐金の調達は各地で行われるだろう。だが、それ以上に注目したいのは、被災した子どもたちの心のケア、高齢者や被災者の精神的、肉体的な回復に向けたアーティストたちの取り組みである。鳥取のフォーラムでも、阪神淡路大震災の翌日から、避難場所となった保育園を回り、子どもたちや高齢者の心身のケアに取り組んだダンサーの活動が紹介された。今回の震災でも、被災地と連携してそうした活動を立ち上げようという取り組みが既に始まっている。
アートならではの復興支援、アートにしかできない地域再生、というものは確実に存在している。亡くなられた方々への祈り、そして未来への希望や復興に向けた勇気を紡ぎ出しながら、芸術や文化による復興と地域再生が進展することを心から願いたい。
吉本 光宏 (よしもと みつひろ)
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