2011年05月25日

貿易統計11年4月~震災の影響で輸出が大きく落ち込み、貿易赤字に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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・震災の影響で貿易赤字に転落
・自動車輸出が急減

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財務省が5月25日に公表した貿易統計によると、4月の貿易収支は▲4,637億円の赤字となったが、事前の市場予想(共同通信集計:▲6,870億円、当社予想は▲4,886億円)に比べれば赤字幅は小さかった。震災に伴う国内生産の落ち込みを背景に輸出が前年比▲12.5%(3月:同▲2.3%)と大幅に減少する一方、原油高の影響などから輸入が前年比8.9%(3月:同11.9%)と高い伸びを維持したため、貿易収支は3ヵ月ぶりの赤字となった。
4 月の輸出入を旬別に分けてみると、輸出は上旬:前年比▲19.4%→中旬:同▲5.4%→下旬:同▲12.2%、輸入は上旬:前年比0.2%、中旬:同27.2%、下旬:同▲1.7%となった。
今年の4月は上旬、下旬は平日(営業日)が昨年よりも1日少なく、中旬は昨年よりも1日多かった。この点を考慮すると、輸出は4月中を通してほぼ同じペースで落ち込んだことになり、サプライチェーン寸断による国内生産急減の影響が続いていることを示すものとなっている。
なお、貿易収支を旬別に見ると、4月中旬までの赤字から4月下旬には黒字に転換しているが、これは輸出よりも輸入のほうが営業日数の影響をより強く受けることによるものと考えられるため、貿易収支が基調として黒字に転換したと考えるのは早計である。
季節調整済の貿易収支は▲4,964億円(3月は14億円の黒字)となり、リーマン・ショック後の09年3月以来の赤字となった。輸出が前月比▲5.5%(3月:同▲8.3%)と2ヵ月連続で減少する一方、輸入は前月比3.8%(3月:同▲1.3%)と3ヵ月ぶりに増加した。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲11.6%(3月:同▲3.3%)、輸出価格が前年比▲1.0%(3月:同1.0%)であった。輸入の内訳は、輸入数量が前年比1.3%(3月:同5.5%)、輸入価格が前年比7.5%(3月:同6.1%)であった。

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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