2011年04月28日

鉱工業生産11年3月~生産は過去最大の落ち込みに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・生産はリーマン・ショック後を上回る過去最大の落ち込みに
・4-6月期は減産幅拡大の公算

■introduction

経済産業省が4月28日に公表した鉱工業指数によると、3月の鉱工業生産指数は前月比▲15.3%と5ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(共同通信集計:前月比▲11.4%、当社予想は同▲11.1%)を下回った。東日本大震災に伴う生産設備の損壊、サプライチェーンの寸断、電力不足が重なったことにより、生産の落ち込み幅はリーマン・ショック後を上回る過去最大となった。
1月、2月平均の生産指数は10-12月期よりも3.0%高い水準となっていたが、3月の急減により1-3月期は前期比▲2.0%(10-12月期は同▲0.1%)と3四半期連続の減産となった。
在庫指数は、工場の操業停止に伴う品不足から自動車を中心として在庫の取り崩しが発生したため、前月比▲4.3%と大幅に低下した。
3月の生産は、速報段階で公表される16業種全てが前月比で低下し、輸送機械、一般機械、鉄鋼、化学(除く医薬品)など10業種は前月比で二桁の落ち込みとなった。特に、輸送機械の落ち込み幅が前月比▲46.4%と圧倒的に大きく、これだけで3月の生産指数は▲8%程度(寄与率は50%超)押し下げられた。3月の輸送機械の生産指数は53.2(05年=100)となり、リーマン・ショック後のボトム(09年2月の55.6)も下回った。なお、輸送機械の在庫指数は生産停止による品不足から前月比▲52.8%(指数水準は38.5)と急低下した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷(除く輸送機械)は10年10-12月期の前期比1.2%の後、2011年1-3月期は同▲2.4%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷は10年10-12月期の前期比2.1%の後、11年1-3月期は同▲0.5%となった。GDP統計の設備投資は09年10-12月期以降前期比で増加を続けてきたが、11年1-3月期は6四半期ぶりの減少となる可能性が高い。
一方、1-3月期の消費財出荷指数は前期比▲7.3%(10-12月期:同▲1.2%)と2四半期連続で低下し、マイナス幅が大きく拡大した。耐久財(前期比▲11.7%)、非耐久財(前期比▲0.4%)ともに低下したが、特に耐久財の落ち込みが大きかった。1-3月期のGDPベースの個人消費は10-12月期の前期比▲0.8%に続き減少する可能性が高い。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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