2011年04月20日

貿易統計11年3月~震災の影響で貿易黒字が急減、1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.1%程度のマイナスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・震災の影響で輸出が1年 4ヵ月ぶりに減少
・3月の輸出はいずれの地域向けも急減
・1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.1%程度のマイナスに

■introduction

財務省が4月20日に公表した貿易統計によると、3月の貿易収支は1,965億円の黒字となり、事前の市場予想(共同通信集計:5,744億円、当社予想は2,627億円)を大きく下回った。震災の影響で輸出が1年4ヵ月ぶりに減少する(2月:前年比9.0%→3月:同▲2.2%)一方、原油高の影響などから輸入の伸びが高まった(2月:前年比10.0%→3月:同11.9%)ため、貿易収支は前年の水準を大きく下回った(前年比▲78.9%)。
輸出入を旬別に分けてみると、輸出は上旬:前年比14.8%→中旬:同▲5.9%→下旬:同▲13.1%、輸入は上旬:前年比16.3%→中旬:同▲11.5%→下旬:同28.6%となった。港湾施設損壊による影響は限定的にとどまったが、震災後の国内生産の落ち込みが輸出に大きな影響を与えたとみられる。
季節調整済の貿易収支は963億円の黒字となり、黒字幅は前月の4,774億円から大きく縮小した(前月比▲79.8%)。輸出、輸入ともに前月比で減少したが、輸出(前月比▲7.7%)のマイナス幅が輸入(前月比▲1.4%)を上回った。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲3.2%(2月:同9.2%)、輸出価格が前年比1.0%(2月:同▲0.2%)であった。輸入の内訳は、輸入数量が前年比5.5%(2月:同4.8%)、輸入価格が前年比6.1%(2月:同4.9%)であった。
輸出はサプライチェーンの寸断や電力不足による国内生産の落ち込みの影響で、4月以降は減少幅が拡大する可能性が高い。一方、輸入は復興需要のための資材調達や火力発電所の再開、増強に伴う鉱物性燃料(原油、液化天然ガス等)の増加などから、増加基調が続くことが見込まれる。
3月は上中旬までの貯金があったため、かろうじて貿易黒字を確保したが、4月は貿易収支の赤字化が避けられないだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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