2011年03月08日

2月マネー統計:リスク回避姿勢は未だ強い、現金が約5年ぶりの伸びを記録

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 銀行貸出残高は対前年▲2.0%
・マネタリーベース: 資金供給量は3ヶ月連続で100兆円を突破
・マネーストック: 現金が4年11ヶ月ぶりの伸び率を記録

■introduction

日銀が発表した貸出・資金吸収動向等によると、2月の銀行総貸出(平残)の前年比伸び率は▲2.0%と前月の同▲1.9%から若干マイナス幅が拡大、15ヶ月連続の前年割れとなっている。
内訳では、底堅い地銀と大幅マイナスの都銀という二極化構造が続いている。地公体向け等の伸びに支えられた地銀(第2地銀含む)では前年比0.8%増(前月も同じ)とわずかながら増加傾向が続いている一方、大幅なマイナスが続く大企業向け貸出の影響を受けやすい都銀等では同▲4.6%(前月は同▲4.5%)と改善の兆しが見えない(図表1~4)。
企業の設備・運転資金需要は依然として力強さを欠いており、手元資金が積みあがっているため、前年比反転にはまだ時間がかかりそうだ。
日銀による「成長基盤強化を支援するための資金供給」(研究開発や環境などの分野への投融資に取り組む金融機関に対して、日銀が年0.1%の低利で資金を供給するもの)の第3回目が2月末に実施された(日銀からの資金供給は3月上旬に実行)。今回の対象先は122金融機関と前回から16増加したが、一部大手行で1行当たりの上限(1500億円)に達したため、供給額は7221億円と前回から28%減少した。
今回の対象は、10~12月に行われた122金融機関の投融資7806億円であり、1件当り平均金額は1.7億円(前回は2.4億円)と引き続き小口化した(図表5)。対象投融資の分野別累計投融資額は、最大の環境・エネルギー分野が全体の3割を占め、以下、医療・介護、社会インフラと続いている(図表6)。
同枠組みは12年3月の期限まで四半期に一度実施される予定(資金供給実行期限は同年6月末)だが、既に累計額は2.2兆円と資金枠3兆円の7割強まで利用が進んでいる。今後、資金枠拡大の動きが出てきそうだ。
同枠組みの活用は順調に進んでいるが、銀行貸出全体に盛り上がりはみられず、日銀が言う“呼び水”効果はなかなか確認できない。また、一部大手銀で既に上限に達していることから、枠の拡大がなければ、大手銀と地銀とで今後の取り組み状況にも差が出てくるだろう。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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