2011年03月04日

金融市場の動き(3月)~地政学リスクから原油高の長期化見通し広まる。新興国は利上げ加速、先進国は引き締め時期の見方が揺れる

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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  1. (民主化要求デモ拡大と高騰する原油価格) チュニジア、エジプトから周辺に波及した民主化要求デモは、 バーレーンやリビア、イエメンだけでなくヨルダンやクウェートに拡大している。それに伴い原油などエネルギー価格の高騰が顕著になっている。コストプッシュ型インフレへの対応を巡り市場の思惑は揺れそうだ。
  2. (日銀金融政策) 金融政策は当面現状維持。0.1%という超低金利長期化のシナリオは変わらず。日銀の出口開始はFRBの利上げ後。「成長基盤強化を支援するための資金供給」政策は近く規模拡大に向けた議論がなされる可能性あり。
  3. (長期金利) 長期金利は世界経済回復シナリオが今後も維持され、長期金利も強含みやすい状況に回帰すると見るが、政情不安の動きがサウジアラビアや中国などに本格的に波及したり、原油高騰によって物価高に拍車がかかり新興国経済が失速するような事態に陥る可能性も排除はできない。その際は株安債券高(長期金利低下)が起こるだろう。
  4. (為替) 米国経済への評価と地政学リスクの動向がポイントとなる。1月米雇用統計の結果は、失業率が大幅低下の一方、雇用者数の増加は予想を大きく下回り、評価が難しかったため、2月雇用統計を市場がどう受け止めるかが重要となる。また、米国は原油多消費型経済であるため、今後中東の混乱が長期化もしくは拡大すれば、ドルの重石となる可能性が高い。この時期固有の要素として決算期末を控えた輸出企業のドル売り円買い圧力もあるため、本格的な円高修正には今しばらく時間がかかるだろう。

 
世界の主要原油輸出国
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総合政策研究部

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