2011年03月03日

法人企業統計10年10-12月期~企業収益は堅調、設備投資は伸び悩み

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・4四半期連続の増収増益
・設備投資は2四半期連続の増加
・10-12月期・GDP2次速報は小幅下方修正を予想

■introduction

財務省が3月3日に公表した法人企業統計によると、10年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比27.3%(7-9月期:同54.1%)と5四半期連続の増加となった。4四半期連続の増収増益だが、売上高の伸びが7-9月期の前年比6.5%から同4.1%へと鈍化したことを主因として、増益率は3四半期続けて低下した。製造業が前年比20.0%(7-9月期:同209.0%)、非製造業が前年比31.6%(7-9月期:同19.9%)であった。
季節調整済の経常利益は前期比10.7%(製造業:前期比3.9%、非製造業:同14.3%)と7四半期連続で増加した。前期比ベースの伸び率は09年7-9月期の前期比42.9%から低下傾向が続き、10年7-9月期は同1.6%となったが、10-12月期は伸びが再び加速した。経常利益(季節調整値)の水準は最悪期(09年1-3月期の4.3兆円)にはピーク時(07年1-3月期の16.0兆円)の3割弱(27.2%)まで落ち込んだが、10年10-12月期(13.2兆円)には8割強(82.9%)まで回復した。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.8%となり、前年よりも0.7ポイント改善したが7-9月期(前年差1.0ポイント)に比べれば改善幅は若干縮小した。製造業が前年差0.5ポイント(7-9月期は同2.3ポイント)、非製造業が前年差0.8ポイント(7-9月期は同0.3ポイント)となった。
製造業は、変動費の伸び(前年比7.0%)が売上高の伸び(前年比6.7%)を上回り、経常利益の圧迫要因となっている。
このところ原油などの国際商品市況が高騰しており、企業収益をさらに大きく下押しすることが懸念されている。製造業の経常利益(前年差)を売上数量、交易条件、その他に要因分解してみると、交易条件(製造業の産出物価/投入物価で計算)は10年1-3月期から悪化を続け経常利益の圧迫要因となっているが、これまでは輸出を中心とした売上数量の伸びがその影響を打ち消すことで増益を確保してきた。ただし、輸出の減速に伴い売上数量の伸びが10年1-3月期をピークに低下しているため、増益幅は縮小している。
11年1-3月期は新興国を中心とした海外経済の好調を背景として輸出の再加速が見込まれる一方、交易条件の悪化幅は大きく拡大することが確実となっている。1月の貿易統計で期待はずれに終わった輸出は2月以降、持ち直しの動きが明確になっていくと予想しているが、輸出の伸び悩みが続いた場合には、増益を確保することが難しくなるだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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