コラム
2011年01月26日

中国が世界第二位の為替への影響

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.中国が世界第二の経済大国に

1月20日、中国国家統計局は2010年の実質経済成長率が10.3%となったと発表し、当日の夕刊各紙は、中国のGDPが日本を上回り世界第二の経済大国になったのは確実だとトップで報じた。このコラムでは2009年8月に「日本が世界第二の肩書きを失う時」というタイトルでこの問題を扱ったように、そもそも2009年に中国に追い越されていても不思議ではなかったので、これはもう大分前から予想された事態だ。筆者としては、ついにそのときが来たかというだけで、正直なところ、これほどの騒ぎになるとは思ってもみなかった。
   世界第二の経済大国どころか、人民元の切り上げ速度が速ければ、2020年までに中国経済の規模が米国経済を上回る可能性もある。12億人の人口を持つインドも着実な経済成長を遂げており、いずれ日本経済を抜いてインドが世界第三の経済大国となるだろう。日本は世界第二の経済大国の地位を失っただけでなく、第四位に後退するのも時間の問題だ。
   2050年の世界の人口は、90億人を超えると予想されているが、その時日本の人口は1億人を切っており、世界の1%程度に過ぎない。国連加盟国は192カ国あり日本の規模は平均よりはかなり大きいが、人口15億程度になるはずの中国やインドといった超大国と比べると、規模だけでは対抗できないのは明らかだ。世界経済の中で日本がどうやって存在感を保っていくのか、しっかりとした戦略が無ければ超大国の中に埋没してしまうのは明らかだ。

2.焦点は2015年のSDRの見直しに

胡錦濤主席は訪米に際して米紙に寄稿し、その中で「米ドル基軸通貨体制は過去の遺物」と指摘したと報道されている。人民元の切り上げを迫る米国の痛い所を衝いて切り返した格好だが、単なる牽制ではないだろう。IMFが補完的な準備資産として位置づけているSDRは、米ドル、ユーロ、英ポンド、円の四つの通貨の加重平均で価値が決まっているが、5年ごとにこの計算方法は見直されることになっている。2010年の見直しでは大きな変更は無かったが、次回の2015年の見直しでは人民元を加えるかどうかが焦点になるだろう。中国は既に輸出額では世界一、経済規模は世界第二位になったわけで、輸入額でも現在よりも重要性を増していくのは確実だ。人民元をSDRの計算に加えるようになるのは時間の問題である。
   米ドルを代替する国際通貨として期待されたユーロは、ギリシャの財政赤字問題を発端に、そもそもユーロ圏が結束して行けるかどうかが試される事態となっており、当面米ドルの地位を脅かす存在にはなりそうもない。中国の人民元も、外貨準備の中心となる基軸通貨となるには取引に関する規制の大幅な緩和が必要で、米ドルにとって代わるには、まだ時間がかかる。従って、米ドルを中心とした体制が急速に揺らぐとは思えないが、新興国経済が力をつけて行く中で、次第に米ドルの相対的な地位が低下することは避けられない。

3.円は新興国通貨に対して下落

日本経済が急速に拡大したのは、高度成長で日本経済が拡大したこともあるが、円高の効果が非常に大きかった点は忘れてはならない。第二次世界大戦後にブレトン・ウッズ体制が発足した時点では、1ドルは360円で、1971年のニクソンショックまでこのレートが続いた。もしも、1ドル360円のままであれば、米ドル建ての日本経済の規模は現在の四分の一以下であり、そもそも世界第二の経済大国にはなりえなかった。
   日本経済が発展する過程で日本企業の国際競争力が高まり、長年円高が続いたように、中国をはじめとする新興国経済の発展は、これらの国々の通貨高をもたらすだろう。一方、第二次世界大戦後基軸通貨としての地位が大きく低下した英国のポンドは、この間に大幅に下落している。過去の英国のポンドと、米ドル、円との関係を見ると、米ドルはポンドに対して強くなったが、円に対しては下落した。米ドルも基軸通貨としての地位が低下するに従って、緩やかだが下落傾向が続くと考えられる。米ドルと円と人民元の三者の関係は、長期的に米ドルは円に対して下落を続けるが、円は人民元に対して下落するという関係になるだろう。

 円とポンドの対ドル相場

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

研究・専門分野
マクロ経済・経済政策

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