コラム
2010年12月21日

ゲゲゲの23年度税制改正

  桑畠 滋

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2010年のユーキャン新語・流行語大賞には「ゲゲゲの」が選出されたが、年の終わりに公表された来年度の税制改正大綱は富裕層にとってはまさにゲゲゲの税制改正大綱となった。個人課税の改正内容については相続税の基礎控除の縮小(定額部分5000万円から3000万円、法定相続人1人あたりの控除1000万円から600万円)、所得税では給与所得控除の上限を245万円に設定、成年扶養控除を給与収入568万円以下に制限するなど、富裕層を狙い撃ちにしたものとなっている(※1)。

また、子ども手当の創設とあいまって平成22年度税制改正で決められた年少扶養控除の廃止、特定扶養親族に対する扶養控除上乗せ部分の廃止が2011年1月から適用されるが、これについても所得税の計算方法が超過累進税制を適用していることから高所得者層ほど負担が大きくなる。当研究所の試算によれば平成22、23年度の制度改正により年収1800万円で子ども2人を抱える専業主婦世帯の可処分所得は2009年から2013年にかけて20万円程度減少することとなる(※2)。

税制改正で富裕層が狙い撃ちにされる要因は、歳出増、歳入減を行う際はそれに見合う安定的な財源を確保しなければならないペイ・アズユーゴーの原則という財政運営の基本ルールがあるためだ。そのため、子ども手当支給額の増額分(2400億円)などに見合う新たな財源を確保しなければならず、最も国民からの不満が少ない富裕層への増税が選択された格好となっている。

だが本当に取り組まなければならない課題は子ども手当の増加分の財源を確保するといった些細なことではない。社会保障と税制の一体改革を通して、いかにして社会保障制度を持続可能なものとしていくかと言うことである。世界に類を見ない速度で進む高齢化を背景として、社会保障関係費は毎年1兆円程度の増加が続いており、一般歳出の規模は過去最大にまで膨らんでいる。その一方、一連の事業仕分けを通じても衆院選マニフェストで掲げていた16.8兆円の財源は確保できず、景気後退を背景に税収の落ち込みも続いていることから来年度予算については公債収入が税収を2年連続して上回ることはほぼ確実である。

政府は2011年度予算において新規国債発行額を2010年度当初予算の44兆円以下に抑えようと躍起になっているが、仮に44兆円以下への抑制が実現したところで財源が圧倒的に不足している状況に変化はない。

それは決して富裕層への増税のみで事足りる金額ではない。今回の税制改正を対岸の火事として半ば他人事のように捉えている中・低所得者に対する負担の増加も遅かれ早かれ現実のものとなるだろう。税制改正大綱の中においても、社会保障改革とその財源確保について消費税を含む税制全体の議論を一体的に行うことが不可欠であり、その実現に向けた工程表とあわせ平成23年度半ばまでに成案を得ると記載されている。政府も本気で消費税増税に取り組むつもりとなっており、遅かれ早かれ消費税は増税されるだろう。消費税が引き上げられた場合は、中・低所得層にとっても負担が増加する。仮に消費税が5%引き上げられた場合、単純に計算すると年収600万円程度の人では20万円弱の負担増となる。これが我々が覚悟しておかなければならない現実である。

※1  ただし、税制関連法案は参院で否決された場合、衆院で3分の2以上の賛成を得て再可決する必要があり、
      衆参ねじれ国会である現在、法案成立の先行きは不透明なものとなっている。今後の動向を注意深く見守りたい。

※2  http://www.nli-research.co.jp/report/econo_report/2010/ke1002.html

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