2010年12月10日

欧州経済見通し~信用不安沈静化の政策努力は続くも、短期間では解消しない市場との溝~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. ユーロ圏周辺国の信用不安再燃の震源地となったアイルランドは総額850億ユーロのEU・IMFなどからの支援を受けて、銀行改革、財政・構造改革を進めることになった。ギリシャではEU・IMFの条件におおむね沿う形で財政構造改革が進展、ポルトガルやスペインでも支援回避に向けた努力が重ねられている。
  2. EU、ユーロ圏のレベルでも信用不安拡大阻止・再発防止への取り組みも着実に前進しているが、財政主権の分散という前提を超える措置を期待する市場との溝は短期間では解消しないだろう。
  3. 周辺国の信用不安の再燃にも関わらず、政策的に域内の波及が抑えられているため、ユーロ圏全体では景気の緩やかな回復が続いている。ドイツなど輸出競争力が高く、且つ、過剰債務を抱えていない国は、緩和的な金融環境、低位の長期金利、景気対策効果の残存、ユーロ安、新興国の旺盛な需要などの恩恵を受けている。2011年以降も、周辺国経済の情勢は厳しいが、全体では主要国主導の緩やかな回復が続く見込みである。


政府債務残高と財政赤字の対GDP比(2010年見通し)


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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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